東京の下町情緒あふれる曙橋駅前の商店街を進んだ先に、信仰熱心なクリスチャンの親子が営む小さな和食店がある。日本で料理人として30年以上経験を積んできたフィリピン出身のミレンデス・ロドニーさんの家族が、昨年3月に開店したお食事処「グレイス」だ。
4年連続でミシュランの「ビブグルマン」に選ばれた専門和食店や、高層ホテルに入居する高級寿司店などで働いてきたロドニーさん。一流料理店の味をリーズナブルな価格で味わってほしいと、人気のあなご料理を中心に、特製のカレーや親子丼など、ボリュームのあるこだわりのメニューを、500円から提供している。
日本の大手海運会社のクルーズ客船でシェフをしていたとき、同じ客船でウェイトレスをしていた妻の久美子さんと出会った。「主人は料理で、私はずっと接客業をやっていて、だいぶ前から店を出そうかという話はしていたのですが、実際に踏み切るまでにはいかなくて」
開店のきっかけは、次女のクリスティンさんの一言だった。「『パパは何がしたいの』と娘が言った一言に、やっぱり店を出してみたいと、主人も私も意見が一致しました。でも初めてのことで怖くなって、神様に祈ったとき、『信じるなら神の栄光を見る、とあなたに言ったではありませんか』(ヨハネ11:40)の御言葉がはっきりと示されて、確信が与えられました」
開店日の3月2日は、ちょうど久美子さんの誕生日。クリスティンさんを含めた親子3人で、新しい信仰の一歩を踏み出した記念日となった。
ロドニーさんと久美子さんが信仰を持ったのは2001年。ちょうど、クリスティンさんが生まれた年だった。「長女が通っていた保育園に、夫と同じフィリピン出身のお母さんがいて、私たちにイエス様のことを伝えてくれました。娘がお腹にいるときに2人で教会に行き始めて、そこで一緒に救われました」
店内には、聖書の言葉にちなんだ装飾が至る所にあり、ワーシップソングがBGMとして流れることもある。「お客さんが落ち着く雰囲気を提供したい」とクリスティンさん。「『心とおなかをいっぱいに』をコンセプトに、お客さんが心もおなかも満たされて帰ってもらえるように、接客から料理、装飾に至るまで気を配っています」
久美子さんも「私たちの接客や料理を通して、お店に来られた方に神様の愛を感じていただければ」と話す。装飾にある聖書の言葉に興味を持った人には、近くのクリスチャンショップなどを紹介しているという。今年からは、若者に福音を伝える伝道団体とコラボして、お店で集会を開くことも考えている。
「神様が始められたお店なので、長く続けていきたい」とロドニーさん。「おいしいにプラスして、何かお客さんに喜んでもらえればといつも考えています。地元の方はもちろん、遠方にいらっしゃる方もぜひ気軽に立ち寄っていただいて、おいしい食事のひとときを楽しんでもらえればうれしいです」
都営新宿線「曙橋駅」A2出口から徒歩3分。住吉町交差点からあけぼのばし商店街に入り、150メートル進んだ先の右側に見える念仏坂の下にある。営業時間は、月曜日から土曜日の午前11時から午後3時(ランチ、ラストオーダーは同2時半)、午後5時から同9時(ディナー、ラストオーダーは同8時半、水曜日のディナーは休み)。日曜日は定休日。公式インスタグラムはこちら。