米国務省は4日、信教の自由に関して「特に懸念のある国」(CPC)に12カ国、一段階低い「特別監視リスト」(SWL)に5カ国を指定すると発表した。
発表(英語)によると、CPCに指定されたのは、ミャンマー、中国、キューバ、北朝鮮、エリトリア、イラン、ニカラグア、パキスタン、ロシア、サウジアラビア、タジキスタン、トルクメニスタンの12カ国。SWLに指定されたのは、アルジェリア、アゼルバイジャン、中央アフリカ、コモロ、ベトナムの5カ国。
CPCに指定された12カ国は、前年または前年以前から指定されており、継続された形。SWLは前年から指定されていた4カ国に、アゼルバイジャンが新たに加えられた。
一方、世界で最もキリスト教徒が殺害されているナイジェリアは、3年連続でCPCから除外された。そのため、信教の自由の擁護団体からは、ナイジェリアの除外を批判する声が上がっている。ナイジェリアはドナルド・トランプ政権下の2020年に初めてCPCに指定された。しかしその後、ジョー・バイデン政権になってからは、CPCから除外され続けている。
キリスト教法曹団体「ADFインターナショナル」の法律顧問(信教の自由担当)であるシーン・ネルソン氏は5日、声明(英語)で次のように述べた。
「ナイジェリアでは、他の全ての国を合わせたよりも多くのキリスト教徒が、その信仰のために殺害されています。バイデン政権が、信教の自由を著しく侵害しているナイジェリアを、再びCPCに指定しなかったことに失望し、深く懸念しています。米国は、ナイジェリアで起きている信教の自由に対するあからさまな侵害について、圧力を強めるべきです」
ナイジェリアでは昨年、クリスマスシーズンにキリスト教徒を狙った組織的攻撃が相次ぎ、約200人が殺害され、キリスト教徒が多数派を占める地域で数百戸の家屋が焼かれるなどした(関連記事:ナイジェリアでクリスマスシーズン狙い襲撃相次ぐ、約200人死亡 さらなる襲撃に懸念)。
米政府の諮問機関である米国国際宗教自由委員会(USCIRF)も4日、米国務省の発表を受け、批判する声明(英語)を発表した。
USCIRFは2023年の年次報告書(英語)で、CPCに指定された12カ国の他に、アフガニスタン、インド、ナイジェリア、シリア、ベトナムの5カ国についてもCPCに指定するよう勧告していた。このうち、ベトナムはSWLに指定されたものの、アフガニスタン、インド、ナイジェリア、シリアの4カ国は、CPC、SWLのいずれにも指定されなかった。
USCIRFのエイブラハム・クーパー委員長とフレデリック・デービー副委員長は声明で、「国務省が、その報告書や声明で言及しているにもかかわらず、ナイジェリアやインドをCPCに指定しなかった理由については正当化できない」と批判。「国務省がわれわれの勧告に従わなかったこと」について連邦議会で公聴会を開くよう求めるとした。
米国務省は今回の発表で、「信教の自由に対する重大な侵害は、(CPCやSWLに)指定されていない国でも発生している」と認めている。一方、ナイジェリアやインドなど、USCIRFが勧告した5カ国をCPCに指定しなかった理由は述べなかった。
米国務省はこの他、信教の自由に関して「特に懸念のある組織」(EPC)も発表した。
EPCには、ソマリアで活動するイスラム過激派組織「アルシャバブ」、ナイジェリアで活動するイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」、シリアの反体制イスラム組織「ヌスラ戦線」、イエメンの親イラン武装組織「フーシ派」、マリなどで活動するイスラム過激派組織「イスラム国サヘル州」(ISSP)、ボコ・ハラムから分裂し、ナイジェリアなどで活動するイスラム過激派組織「イスラム国西アフリカ州」(ISWAP)、国際テロ組織アルカイダ系の「イスラムとムスリムの支援団」(JNIM)、そして、アフガニスタンを実効支配するイスラム組織「タリバン」の8組織を指定した。
これら8組織は前年からの継続の指定。一方、前年は、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」もEPCに指定されたが、今回は除外された。