1日に最大震度7を記録した能登半島地震では、さまざまなキリスト教系の支援団体が、地震発生から2週間以上がたった今も余震や断水が続く石川県内の被災地を中心に支援活動を継続している。緊急支援として、食料や水、衣料品などの物資を届けるほか、厳しい避難生活を強いられている被災者に炊き出しを行い、温かい食事を届けるなどしている。また、同県内の諸教会は「能登地震キリスト災害支援会」(通称:能登ヘルプ)を設立。被災地の教会も、支援団体と協力しながら被災者支援に向けて動き出している。
グッドネーバーズ・ジャパン
地震発生翌日の2日からスタッフが被災地に入ったグッドネーバーズ・ジャパン(GNJP)は、これまでに石川県輪島市内の4つの避難所でそれぞれ1回ずつ計4回の炊き出しを実施した。
1回目の8日は、約60人が避難している同市小伊勢町の大屋公民館で、温かい豚汁とおにぎりを振る舞った。チョコレートやせんべいなどの菓子も提供し、小さな子どもたちを含め避難者から喜ばれた。中には炊き出しを手伝ってくれる人もおり、「こうやって作ることから配膳、片付けまでしてくれてありがたいです」と話していたという。
2回目の10日は、約70人が避難している同市西脇町の河原田公民館で中華丼を提供。3回目の12日も、同じく中華丼を、建物の一部を避難所として提供している同市東中尾町のJAのと・おおぞら天翔河原田で配った。ここでは、約80人いた避難者のうち8割以上が高齢者であったため、鶏ひき肉を使用するなど食べやすいように工夫して提供したという。また、14日には4回目の炊き出しを同市横地町の河原田小学校で行い、100食を提供した。
避難所の多くは断水が続いており、入浴や洗濯、食器の洗浄、トイレの水洗などで問題を抱えていた。そのため、炊き出しを行うだけでなく、下着や靴下、使い捨ての食器、トイレの掃除用品などの物資の提供も行ったという。
GNJPは、「被災地の状況や避難所でのニーズは刻一刻と変わるため、適切な活動を行うためには細やかなコミュニケーションが求められます。私たちは今後も自治体や避難所の方々と連携し、被災者の方々に必要な支援を届けてまいります」としている。
ハンガーゼロ
4日に緊急支援チームの第1班を派遣していたハンガーゼロは、16日には第2班を派遣。同日には、同市門前町の浦上公民館で炊き出しを行った。炊き出しは、前日に現地入りしていたハンガーゼロの支援教会である本郷台キリスト教会(横浜市)のチームと協力して行った。
ハンガーゼロの広報担当者である鶴浦弘敏さんは石川県出身で、2007年の能登半島地震でも緊急支援を行った経験がある。07年の震災時、家屋や店舗内の片付けを手伝った陶器店の店主にも再会し、今回の被災状況について聞き、詳細を報告している。また、いずれもハンガーゼロの支援教会である日本基督教団輪島教会(同市河井町)と輪島聖書教会(同)も訪問。両教会の被災状況も報告している。
輪島教会は、隣接する建物の影響もあり危険判定の赤紙が貼られており、同教会の新藤豪(つよし)牧師は近くの避難所に入りながら教会員をサポートしているという。
輪島聖書教会は07年の震災時にもハンガーゼロが緊急支援を行っており、その後には慰問コンサートを開催したことがある。今回の地震では、会堂には大きな被害はなかったものの、併設する牧師夫妻が居住する建物が使用できない状態に。同教会の荒川康司牧師は地震発生時、会堂2階の牧師室にいたが、体も本棚も宙に浮いたと話していたという。
また、能都聖書教会(同県能登町)にも訪問し、水や日用品、衛生用品、パンの缶詰などを届けた。一方、同教会はキャンプ施設が併設されており、今後ボランティアの拠点にできないか相談をしたという。
ワールド・ビジョン・ジャパン
被災地の子どもに特化した支援を計画しているワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)は、第1陣のチームを7日に石川県に派遣。現在、金沢市を拠点に周辺自治体を訪れるなどし、ニーズ調査を行っている。
9日には七尾市の茶谷義隆市長と面会し、避難所となっている同市の山王小学校を訪問するなどした。被災者を一時的に受け入れる「1・5次避難所」となった金沢市のいしかわ総合スポーツセンターでは、避難所内の子どもの居場所の立ち上げをサポート。被災者の要望に応じて、乳児用の沐浴(もくよく)やおむつ処理のための備品を急きょ調達するなどした。11日には七尾市の中島小学校や穴水町を訪問。避難所にいる子どもや保護者らから話を聞くなどしたという。
WVJのチームには、心理的応急処置(PFA)研修の経験も豊富なスタッフが入っており、こうした調査を基に今後、避難生活を強いられている子どもたちが安心・安全に過ごせる居場所の開設や学校再開支援などを行っていく予定。
オペレーション・ブレッシング・ジャパン
4日から被災地に入っているオペレーション・ブレッシング・ジャパン(OBJ)は、被災者の要望を踏まえ、11日から暖房や発電機のための燃料の緊急支援を始めた。被災者からは「昼間は暖房を消して燃料を節約している」「どこの店でも(燃料が)手に入らないので途方に暮れている」といった切迫した声が寄せられているとし、灯油や軽油、ガソリンなどを、ニーズに合わせて調達し、被災地に届ける取り組みを進めている。
石川県内の諸教会が「能登ヘルプ」設立
こうした支援団体と協力する形で、石川県内の諸教会は「能登地震キリスト災害支援会」(通称:能登ヘルプ、代表:岡田仰=金沢独立キリスト教会牧師)を設立。開設されたフェイスブックには既に、支援団体と協力して行っている活動の様子が報告されている。
OBJによると、能登ヘルプでは、OBJやハンガーゼロのほか、九州キリスト災害支援センター(九キ災)や石巻クリスチャンセンター(ICC)、OM日本、日本YWAM、救世軍、東海福音フェローシップ(TEF)災害対策委員会、キリスト全国災害ネット(全キ災)などが協力して活動を行っていくという。
各団体はいずれも、支援活動のための募金を実施している。各団体の支援活動に関する最新の情報や募金に関する情報は、各団体のホームページやSNSで確認を。