カナダ連邦議会の下院である庶民院は11月30日、クリスマスやイースターを法定祝日とすることは「構造的な宗教差別」の事例だとする、カナダ人権委員会(CHRC)の文書「宗教的不寛容に関する討議書」(英語)を非難する動議を全会一致で可決した。
カナダのテレビ局「グローバルニュース」(英語)によると、動議には「何世代にもわたってケベック州とカナダの伝統の一部であった行事を分断しようとするあらゆる試みを非難し」、「クリスマスシーズンを迎えるに当たり、全てのケベック州民とカナダ市民が団結するよう呼びかける」という文言が含まれていた。
庶民院が動議を可決したのは、動議を提出したケベック連合のアラン・テリエン議員と、ジャスティン・トルドー首相との間で激論(英語)が交わされた翌日のことだった。ケベック連合は、同国東部ケベック州の独立や自治権拡大を主張する政党で、庶民院では約1割に相当する32議席を有する第3党。
テリエン氏は議会で、「サンタクロースは人種差別主義者なのでしょうか。雪は人種差別的でしょうか。議長、首相によれば、クリスマスは人種差別的だというのでしょうか」と尋ねた。
これに対し、トルドー氏は、「議長、まったくばかげた質問に答えることができて、とてもうれしいところです」と述べ、「明らかに、クリスマスは人種差別的なものではありません」と話した。
「ここは多様性の国です。私たち個人の信条を祝うだけでなく、隣人たちの行事も共有し、祝う国です。それがこの国をとても豊かなものにしています。喜びを分かち合うことで、私たちはより豊かで多様な国になります。ケベック連合はいつもばかげた手法でけんかを売ります。私はもう、うんざりです」
10月23日に発表されたCHRCの文書は、カナダではクリスマスとイースター(実際にはイースターの日曜日を挟んだ金曜日と月曜日)が唯一の宗教的法定祝日であるため、国内のキリスト教徒以外の人々に悪影響が及ぶ可能性があると警鐘を鳴らしている。
文書は、「カナダにおける宗教的少数派に対する差別は、カナダの植民地主義の歴史に根ざしている」とし、クリスマスやイースターが構造的な宗教差別の「最たる事例」だと主張。「その結果、非キリスト教徒は、聖なる日や宗教上、仕事を控える必要がある時期を守るため、特別な配慮が必要となるかもしれません」としている。
文書は、マイクロアグレッション(無自覚の差別)を含め、言葉によるものや行動によるものまで、さまざまな「宗教的不寛容の日常的現れ」を列挙。事例の一部として、「ユダヤ教やイスラム教の聖日にチームミーティングを予定する」「イスラム教徒はカナダに来たばかりだと思い込む」などを紹介している。
その上で文書は、宗教的不寛容と闘うために、カナダ市民に対し、「(クリスマスやイースターのような)法定祝日に結び付かない、多様な宗教の日や文化的意義のある日」に親しむことを勧めている。