第5回日本ゴスペル音楽祭が10月21日、日本基督教団東京山手教会(東京都渋谷区)で開催された。第4回は、大型台風の直撃や新型コロナウイルスの影響で大幅延期された上、オンライン開催となったことから、ライブ開催は2018年の第3回以来5年ぶりとなった。
日本ゴスペル音楽祭は、日本におけるゴスペル音楽の普及と技術の向上を目的に、日本ゴスペル音楽協会が15年から開催している。今年は、音楽祭のために結成された国内外で活躍するゴスペル音楽ディレクターたちによる特別クワイアを含め、7組がステージに立った。
日本ゴスペル音楽協会のジョシュア佐佐木理事長は、「長い試練のトンネルを抜けて、こうして5年ぶりに開催することができました。私たちの喜びをこの会場で、みんなで一緒に爆発させたいと思います。楽しんでいきましょう」とあいさつ。さらに近い将来、富士山のふもとにある野外音楽堂「河口湖ステラシアター」(山梨県)を会場に、3千人規模の音楽祭を開催することを計画していることも明かした。
この日、最初にステージに立ったのは、神奈川県茅ヶ崎市などで活動している「ウィズ・ゴスペル・クワイア」のエンジョイチーム。同クワイアは、より深い学びと積極的な活動をするアクティブチームと、マイペースに学び活動するエンジョイチームの2チームで構成されており、今回はエンジョイチームが「チャレンジ部門」で出演。ピンクのアクセントがある衣装で統一した総勢約40人のメンバーが、「Ride On, King Jesus」と「Believe For It」の2曲を歌った。
次にステージに立ったのは、東京スクールオブミュージック専門学校(TSM)渋谷の学生たちによる「TSM渋谷ゴスペルアンサンブル」。水樹奈々やゴダイゴ、ゆずとの共演実績もある実力派で、第3回では実質3位に当たる「ハートウォーミング賞」を受賞している。黒一色で統一した衣装で出演したこの日は、歌声だけでなく、体を大きく使った切れの良い振り付けでも会場を魅了した。
続いて、日本を代表するゴスペルグループ「ザ・ソウルマティックス」が提供する教育システム「JASLA」の検定上位者による「JASLAシンガーズ」、TSM渋谷の姉妹校で過去2回の優勝経験のある東京スクールオブミュージック&ダンス専門学校(TSM)の学生たちによる「TSMゴスペルアンサンブル」、ザ・ソウルマティックスが指導する東京・横浜の合同チーム「ソウルマティックス・マスクワイア」と、いずれも引けを取らない実力派チームが連続して出演。会場をゴスペルの魅力で釘付けにした。
そして、今回の音楽祭の目玉であるゴスペル音楽ディレクターたちによる特別クワイアが登場。ザ・ソウルマティックスの近藤章裕が指揮を執り、普段はディレクターとして指揮を執る石森扶美子、腰知典、高木美奈子、TiA、中山栄嗣、のはらヒロコ、綿引京子がメンバーとなって、「Shake The Foundation」「It's Not Over」など4曲を歌った。
各曲の間には、ディレクターそれぞれが一言ずつコメントも述べた。16歳でメジャーデビューし、楽曲が人気アニメ「NARUTO」の主題歌にも採用されるなど、若いときから一線で活躍するTiAは、デビュー10周年を迎えたとき、歌手をやめようとさえ考えるほど、思い詰めていたことを打ち明けた。その時期に単身渡米し、ニューヨークで暮らすようになるが、そこで出会ったのがゴスペルだった。
「もう歌をやめよう、もうここから消えてしまいたいと思っていたのですが、ゴスペルを歌うことで、歌う自分に戻れ、命を救われたのです」。自分の体験を話しつつ、「ゴスペルは、まだまだ日本でもっともっと浸透して、大きくなっていく音楽だと思っています。それくらいのパワーがある素晴らしい音楽だと思っています」と話した。
最後には、日本ゴスペル音楽協会が主催する「タバナクル・カフェ」の参加メンバーも登壇。パズ・チャーチ(川崎市)の伝道師でゴスペルシンガーの塩谷達也や、日本ゴスペル界の第一人者として知られる故亀渕友香が立ち上げたコーラスグループ「The Voices of Japan」(VOJA)の現代表を務める榊原暁らと共に、会場の参加者も含めて全員で「FIRE」「Hallelujah, Salvation and Glory」の2曲を歌った。
表彰式では、コンペティション部門に出場した4組の代表者にトロフィーが手渡された。今年は、出場した全組に賞が贈られ、TSM渋谷ゴスペルアンサンブルはネクストジェネレーション賞、JASLAシンガーズは特別協賛団体のアトリエヨシノ(神奈川県相模原市)によるアトリエヨシノ賞、ソウルマティックス・マスクワイアは審査員特別賞を受賞。TSMゴスペルアンサンブルには、日本ゴスペル音楽協会賞が贈られた。