イスラム組織「ハマス」による大規模攻撃を受け、ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ地区に対しイスラエルが報復攻撃を続ける中、16の福音同盟・福音派団体が、イエスの教えは暴力の時代にあっても平和を求めるものだとして、停戦を呼びかける共同声明(英語)を発表した。
1日に発表された声明には、中東・北アフリカ福音同盟(MENAEA)やアジア福音同盟(AEA)、中南米福音同盟(AEL)の3つの地域レベルの福音同盟の他、国レベルの福音同盟や福音派団体、合わせて16団体が署名した。
声明は、中東紛争の複雑さと歴史的な根深さ、そしてそれを取り巻くさまざまな視点があることを触れ、この地域の複雑さを完全に把握できていないことを認めつつも、「私たちは、イスラエルと、ハマスなどのパレスチナのさまざまな組織や支持者との間の敵対行為の緩和と停止を求める」としている。
「私たちは、ハマスによる民間人への攻撃を非難する。ハマスの侵略行為とユダヤ人市民の殺害は、1日における最大規模であり、ホロコースト以来の嘆かわしく卑劣な行為である。また、イスラエルによるハマスの討伐により、パレスチナでさらに多くの民間人の犠牲者が出ていることも認識している。パレスチナ市民のさらなる犠牲を非難する」
その上で、中東情勢が「暴力の連鎖を引き起こしている」とし、「暴力の連鎖が断ち切られ、加害者と被害者が復讐(ふくしゅう)への罪深い欲望から解放されたときにのみ、平和が達成される」と指摘。「私たちが所属する教会は、人々が復讐への欲求から解放されるのを助けることによって、暴力の連鎖を断ち切り、聖地と中東の全ての人々の繁栄に向けて努力する責任があると信じている」としている。
声明はまた、ハマスに対しては全ての人質を解放するよう要求。さらに、あらゆる形態の人種差別や反ユダヤ主義を含む、民族や宗教に基づく非人道的な行為を非難している。
声明には10日現在、中東・北アフリカ、アジア、中南米の3つの地域レベルの福音同盟、エチオピア、ヨルダン、インド、ケニア、カタール、南アフリカ、スリランカ、ネパール、エジプトの9つの国レベルの福音同盟、イラク全国福音教会協会、イラククルド人自治区福音教会協議会、欧州アラビア語圏福音同盟、カレブ大学(インド)の4つ福音派団体、合わせて16団体が署名しており、現在も賛同団体を募っている。
イスラエルによるガザ地区への報復攻撃は、国際的にテロ組織と見なされ、2007年以来同地区を実効支配しているハマスが、10月7日にイスラエル南部へ大規模な攻撃を行ったことに端を発している。このハマスの攻撃では、多数の一般市民を含む1400人余りが殺害され、死者の中には多数の外国人も含まれていた。
これに対し、イスラエルは報復攻撃として直ちにガザ地区への空爆を開始。一般市民に対し同地区南部への退避を勧告した上で、10月末には同地区北部への地上侵攻を始めた。ハマスが運営する同地区の保健当局は、イスラエルの報復攻撃が始まって以来、死者が1万人を超えたと発表している。ただし、同地区の保健当局は戦闘員と民間人の死者を区別して発表しておらず、イスラエルはハマスが民間人を「人間の盾」にしていると以前から非難している。
AP通信(英語)は7日、イスラエル軍がガザ地区最大の都市であるガザ市を包囲し、同地区北部を孤立させたと報じた。ガザ市内では、ハマスが防衛のために築いた広範なトンネル網を使うことが予測され、激しい市街戦になる可能性があるとされる。一方、ロイター通信によると、イスラエル政府と協議してきた米政府は9日、人道目的のためイスラエル軍が同日から毎日4時間、戦闘を休止すると発表した。ただし、イスラエル軍はあくまでも短時間の局所的な戦闘の一時休止だとし、停戦は否定している。
イスラエルと米国のキリスト教とユダヤ教の宗教指導者ら50人余りは10月18日、ジョー・バイデン米大統領に対し、イスラエルにハマスとの停戦を迫ることを控えるよう求める公開書簡(英語)を発表している。そのような動きは、イスラエルの今後の安全保障を脅かすためだとし、イスラエルがハマスの完全な解体を行う必要性を強調している。
書簡はイスラエルの英字日刊紙「エルサレム・ポスト」に掲載され、次のように述べている。
「イスラエルが、自国民を抑圧する残忍なテロ政権を衰退させ、敗北させるだけでは十分ではない。イスラエルは、ハマスの非道を人類の歴史から消し去るために、ハマスの戦闘員を全て壊滅させなければならない。もし米国がイスラエルに圧力をかけて停戦に持ち込むなら、イスラエルの敵はさらに強化され、イスラエルは今後、危険にさらされることになるだろう」
書簡に署名した米国の宗教指導者には、プレストンウッド・バプテスト教会のジャック・グラハム牧師、ハーベスト・クリスチャン・フェローシップのグレッグ・ローリー牧師、全米ヒスパニック・キリスト教指導者会議(NHCLC)会長のサミュエル・ロドリゲス牧師、キリスト教指導者会議(CCL)議長のジョニー・ムーア氏、元駐イスラエル米大使で正統派ユダヤ教徒のデイビッド・フリードマン氏、元米下院議員でリージェント大学ロバートソン行政大学院学長のミシェル・バックマン氏、ドナルド・トランプ前米大統領の霊的助言者として知られる女性テレビ伝道者のポーラ・ホワイト氏らが含まれている。