パレスチナ自治区ガザ地区北部の病院で17日夜、大規模な爆発があり、同地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」は500人以上が死亡したと伝えたが、イスラエルとハマスの双方が爆発への関与を否定している。一方、爆発の被害に遭ったのは、同地区最古の病院の一つにして、唯一のキリスト教病院であるアル・アハリ・アラブ病院だった。
ハマスは爆発後すぐに、イスラエルの空爆によるものだと非難。一方、イスラエルは軍の関与を否定した上で、複数の証拠映像を挙げ、パレスチナの過激派組織「イスラム聖戦」(PIJ)のロケット弾が誤爆したものだと主張している。
アル・アハリ・アラブ病院を運営するエルサレム中東聖公会のエルサレム教区は同日、声明(英語)を発表。病院への攻撃は「残虐」で「人道に反する罪」であり、「最も強い言葉で非難する」とした。
世界の聖公会の霊的最高指導者である英国国教会のカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーは、爆発の2日前に発表した声明(英語)で、アル・アハリ・アラブ病院やガザ地区にある他の医療施設の安全性について懸念を表明。アル・アハリ・アラブ病院は、14日夜にはイスラエルのロケット弾攻撃を受け、スタッフ4人が負傷したと述べていた。
イスラエルはガザ地区北部の住民に対し避難命令を出しているものの、ウェルビー大主教は、アル・アハリ・アラブ病院や他の医療施設にいる重病人や負傷者は「安全に避難することができない」と指摘。ガザ地区は医療物資も不足しており、「大惨事に直面している」とし、イスラエルに避難命令を撤回するよう求めていた。
エルサレム教区は声明の中で、医療施設の保護と、避難命令を撤回するよう求めるウェルビー大主教の呼びかけに同調。「国際人道法の信条によれば、病院は聖域だが、今回の攻撃はその神聖な境界を越えたものだ。(中略)残念ながら、ガザ地区には依然として安全な避難場所はない」「私たちの敷地内で亡くなった無数の魂の喪失を悲しむとともに、全ての教会と施設において喪に服すことを宣言する」と述べた。
ハマスは、アル・アハリ・アラブ病院には「数百人の病人や負傷者、強制的に家を追われた人々」がいたと主張している。
パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長は、アル・アハリ・アラブ病院で多数の死傷者が出たことを受け、同病院の犠牲者とパレスチナの全て犠牲者のために3日間喪に服すと宣言した。
アル・アハリ・アラブ病院と協力しているキリスト教慈善団体「エンブレイス中東」は、同病院の爆発は、エルサレムと世界中の諸教会が平和のために祈りと断食をしていた同じ日に起きたとし、「打ちのめされている」と述べた。
アル・アハリ・アラブ病院は1882年、英国国教会の海外宣教団体である「英国教会伝道協会」(CMS)によって設立された。その後、1954年から30年近くは、米南部バプテスト連盟(SBC)の医療伝道部門が運営したが、それから現在までは、エルサレム中東聖公会のエルサレム教区が運営している。
連帯を示すためにイスラエルを訪問しているジョー・バイデン米大統領は、爆発はイスラエル以外の勢力が起こしたとする見方を示した上で、「米国は紛争中の民間人の生命保護を明確に支持しており、この悲劇で死傷した患者、医療スタッフ、その他の罪のない人々を追悼する」と述べた。