インド北東部マニプール州では、キリスト教徒が多数を占めるクキ族に対する暴力が、5月の発生以来、軍の介入にもかかわらず激化している。この紛争により、最近さらに8人の命が奪われ、29人が負傷した。9月初めまでにクキ族のキリスト教徒131人が殺害され、200の村と360余りの教会が焼かれたり、破壊されたりしている。
インドのニュースサイト「ザ・プリント」(英語)によると、最近の衝突は、ヒンズー教徒が多数を占めるメイテイ族が住む同州ビシュヌプール県と、クキ族が住む同州チュラチャンドプール県の県境付近で発生した。死者8人はそれぞれの部族から4人ずつ出ている。
クキ族の指導者らは、米キリスト教メディア「クリスチャンポスト」(英語)に、メイテイ族の死者が出るのは、クキ族の居住地域にメイテイ族の一部が侵入し、命にかかわる攻撃を始めた場合だけだと語っている。
マニプール州では、これまで少数派のクキ族のために確保されていた特別経済恩恵と割り当てを、多数派のメイテイ族にも拡張するよう裁判所が命じ、物議を醸している。また、メイテイ族には州政府の後ろ盾上があるとされており、裁判所の命令には、クキ族が住む丘陵地帯の土地をメイテイ族が購入可能にする権利の付与も含まれる。
インド政府は、軍、武装警察および治安要員を約5万人配備し、部族間の緩衝地帯の警備を強化している。しかし、こうした対策にもかかわらず、マニプール州では暴徒が州警察から4千丁以上の銃と50万発以上の弾薬を略奪している。
インドの別のニュースサイト「ザ・ワイヤー」(英語)によると、インドの準軍事組織アッサム・ライフル部隊のP・C・ネール中将は「前例がない(状況)」とした上で、両部族が保有する「大量の武器」が重大な懸念事項だと強調した。その上で、「武装反乱軍と戦うために訓練された部隊にとって、群衆が部隊を取り囲み、女性が道路を封鎖することが新たな障害となっています」と続けた。
「われわれがここにいる理由は、さまざまな段階の暴力を抑えるためです。しかし、さらに重要なのは、複数の市民団体やさまざまな利害関係者と対話し、話し合いの場を持たせることです」
インドの最高裁判所も、マニプール州では「法と秩序が保たれていない」としており、紛争に関わる一連の審理は現在、隣接するアッサム州の裁判所が担当している。また、暴力を制圧できず、武器の略奪を許した州警察には非難の矛先が向けられている。
アッサム州最大の部族指導者組織「先住民部族指導者フォーラム」(ITLF)によると、クキ族はこれまでに131人が殺害され、200の村と7千軒の家屋、360の教会が焼かれたり、破壊されたりしており、少なくとも4万1425人が避難生活を余儀なくされている。
クキ族が多く住むチュラチャンドプール県内の病院には、クキ族の犠牲者の遺体が計35体しか安置されていないが、メイテイ族が多く住むインパール地域(西インパール県、東インパール県)の病院には、それを超える遺体が安置されている。この部族間の紛争では初め、インパール地域でクキ族の犠牲者の大半が殺害された。
クキ族の指導者が8月、クリスチャンポスト(英語)に語ったところによると、クキ族の犠牲者の集団埋葬は、インパール地域に安置されている遺体が、チュラチャンドプール県に移送されてから行われる予定だったが、アミット・シャー内相の要請で延期された。
マニプール州政府とインド政府は現在、双方ともヒンズー至上主義を掲げるインド人民党(BJP)が政権を握っている。
欧州議会は7月、マニプール州の平和回復を急ぐようインド政府に求める決議を採択した。
欧州議会は決議で、「政治的動機に基づいた政策により、ヒンズー至上主義や民族の分断が助長されているという懸念や、過激派グループの活動が活発化しているという懸念がある」と表明。また、「治安部隊による党派的な殺人への関与が当局への不信感を高めている」としている。