ナイジェリアの高等裁判所は8月24日、イスラム教からキリスト教に改宗したメアリー・オロウェさん(仮名、18)を、家族の脅迫から守る内容の命令を出した。命令は、改宗の基本的権利を明確にするもので、イスラム教からキリスト教への改宗を法的に認めるもの。
オロウェさんは、キリスト教に改宗したために、父親と兄弟から殺害予告を受けた。母親は、オロウェさんがキリスト教コミュニティー内の安全な場所に避難するのを助けた後、オロウェさんの法的保護を求めた。
オロウェさんの訴訟を支援した国際人権擁護団体「自由防衛同盟」(ADF)によると、高裁は、「申立人(オロウェさん)がイスラム教からキリスト教への改宗を決定したことに伴い、被告ら(オロウェさんの父親と兄弟)が申立人の生命を脅かしたり、それを試みたりすることを禁じる。また、申立人の宗教または思想の選択に関する基本的権利を侵害してはならない」と命じた。
この命令に対する不服申し立てはなかった。
ADFの法律顧問であるショーン・ネルソン氏は声明(英語)で、次のように述べた。
「私たちは、メアリーがこのような歴然とした脅迫から保護され、裁判所がイスラム教からキリスト教に改宗する基本的権利を認めたことに安堵(あんど)しています。これは重要な決定です。(この決定が)キリストを信じるようになったという理由だけで命を脅かされる脅威に直面している他の人々の助けとなることを祈ります」
「信仰を理由に、あるいは、ある信仰から別の信仰に改宗したことを理由に、迫害されたり、嫌がらせを受けたり、命を狙われたりしてはなりません。ナイジェリアでは、イスラム教から改宗したキリスト教徒が、家族からさえも脅迫や襲撃を受け、自由に信仰を実践することを否定されることが多いのです」
オロウェさんの訴訟は、ナイジェリア北西部のソコト州で昨年、キリスト教徒の学生がイスラム教徒の同級生に殴り殺された事件を受けて起こされた。
ウイニングオール福音教会の会員で、シェフ・シャガリ教育大学の学生だったデボラ・エマニュエルさん(25)は昨年5月、イスラム教徒の同級生にメッセンジャーアプリで送った内容がイスラム教の神を冒瀆(ぼうとく)するとされ、殴り殺された。
また、モーニングスター・ニュース(英語)によると、ロダ・ヤウ・ジャタウという名のキリスト教徒の女性は、エマニュエルさんの殺害を非難する投稿をメッセンジャーアプリで共有したために逮捕され、冒瀆罪で4カ月余り監禁された。
キリスト教迫害監視団体「オープンドアーズ」によると、ナイジェリアはキリスト教徒に対する迫害が特に深刻な国で、キリスト教信仰を理由に殺害された人の数は昨年、世界で5600人余りに上ったが、このうち90パーセントがナイジェリアで殺害されたとされている。