ケニア政府はこのほど、断食して死ねばイエスに会えるなどと説き、信者ら400人余りを餓死させたカルト指導者が率いる教会をはじめ、5つの教会を閉鎖した。
AFP通信(英語)によると、自称牧師のポール・マッケンジー・ヌセンゲ容疑者が主宰する「グッド・ニュース・インターナショナル・ミニストリーズ」(GNIM)は、5月19日付で認可を取り消された。
ヌセンゲ容疑者は、断食して死ねばイエスに会えるなどと説き、餓死するよう信者らを扇動したとされ、ケニアの人々に深い衝撃を与えた。犠牲者は、餓死が主な死因と考えられているが、子どもを含む数人は首を絞められたり、殴られたり、窒息させられたりして亡くなっていたことが、検死の結果明らかになっている。
ケニア政府はこの他、テレビ伝道者のエゼキエル・オンボク・オデロ容疑者が率いる「ニュー・ライフ・プレヤー・センター・アンド・チャーチ」も閉鎖した。オデロ容疑者はヌセンゲ容疑者との関係を供述しており、現在、殺人や自殺幇助(ほうじょ)、過激活動、マネーロンダリングなどの容疑で取り調べを受けている。オデロ容疑者の逮捕は、同国南東部マリンディ近郊のシャカホラの森で、ヌセンゲ容疑者の教会の信者と見られる人骨が発見されたことに端を発する。
一方、ヌセンゲ容疑者の勾留期限は最近、47日間延長された。犠牲者はまだ増える可能性があり、今後の捜査で全容の解明が期待されている。
「シャカホラの森の虐殺」と呼ばれるようになったこの凄惨な事件は、ケニア政府にカルトの取り締まりの必要性を突き付けている。
ケニアはキリスト教国で、4千以上の教団・教会が登録されている。しかし、「繁栄の福音」が説かれることが多く、一方で取り締まりを強化すれば政教分離を損なうとして反発を招くことから、政府は犯罪行為に関与する教会を規制するのに手を焼いてきた。
ジョセフ・ブユカ容疑者は、ヌセンゲ容疑者と共謀して信者337人の殺害を指示したとして逮捕されたが、6月にハンガーストライキが原因で勾留中に死亡した。事件を巡っては、30人近くが逮捕されたが、他の容疑者2人もハンガーストライキのために体調を崩したとされる。
ヌセンゲ容疑者は、子どもを含め信者を飢えさせるよう命じたとして、4月に逮捕された。当初は保釈されたが、その後も遺体が発見され続けたことを受け、再逮捕された。
ヌセンゲ容疑者の教会の信者らは、シャカホラの森に共同体を形成していたが、大量の餓死者が出ているという通報を受け、警察が介入した。
警察は、「無知な市民がヌセンゲ容疑者に洗脳され、イエスに会えるという口実で餓死している」という通報を受けていた。また、テレビ伝道者のオデロ容疑者は、通常より早く天国に行くため食物を断つよう信者に勧める教義を広めたとして捜査を受けていた。
英公共放送BBCは5月の報道(英語)で、脱会者のタイタス・カタナさんの話を伝えている。カタナさんによると、ヌセンゲ容疑者の教会から脱会しようとした者は裏切り者の烙印(らくいん)を押され、暴力的な仕打ちを受けるという。また、犠牲者には死ぬ順番があり、子どもが最初に死ぬことになっていたという。