米メガチャーチ「ライフチャーチ」が開発した無料の聖書アプリ「ユーバージョン」が今月、15周年を迎えた。アプリのダウンロード数は5億7千万件を超え、現在も毎分95件余りのペースでダウンロードされ続けており、その人気が衰える気配はない。
ユーバージョンの開発者で最高責任者(CEO)であるライフチャーチのボビー・グルーネワルド牧師は、15周年を迎えて出した発表(英語)の中で、米アップル社が2008年7月10日に自社のアプリストアである「アップストア」を立ち上げた際、利用可能な最初の800アプリの1つとしてユーバージョンがリリースされたことを説明した。
リリース後の3日間で、ユーバージョンのダウンロード数は8万3千件を超えた。これは、グルーネワルド氏がその年の年末までに達成することを目標としていたダウンロード数をはるかに上回るものだった。アップストアには今日、何百もの他の聖書アプリを含む160万以上のアプリが存在するが、ユーバージョンはその中でも人々の期待を上回る結果を出し続けている。
「このアプリの承認申請をしたとき、アップストアのオープン日に間に合うのか、あるいは承認されるか自体分かりませんでした」とグルーネワルド氏は振り返る。「結局、オープン日に利用可能な数百の無料アプリの一つとなり、最初の週末で驚異的な数字を記録しました。正直、心から驚きました」
そして、人々が何年にもわたって聖書アプリを日常生活に取り入れ続けるにつれ、その人気は上昇の一途をたどってきた。
「ユーバージョンはこの15年間にわたり、プッシュ通知によるリマインド機能や、ストリーク(アプリを何日連続で利用したかを示す機能)のようなゲーム的な機能、友情や祈りのようなコミュニティー機能を使用することを含め、人々が持続的に聖書に触れる習慣を構築することを助けるために、技術革新を活用してきました」
グルーネワルド氏によると、多くのクリスチャンが教会に行く日曜日には、ユーバージョンの利用が急増するという。
「最終的に私たちは、人々がその人にとって最適な形で毎日神の御言葉の中で過ごすことを望んでいます。毎週日曜日に聖書アプリの利用が急増するのは当然ですが、人々が一週間を通して持続的に聖書に触れていることを見られるのは、私たちの励みになります」
「私たちは今、ユーバージョンを通して神がなさろうとされていることのほんの始まりにいると信じています。15年たった今でも私たちのストーリーは過去にあるのではなく、何百万人もの人々が神の御言葉を通して神との親密さを築くのを助ける方法に焦点を当て続けている、本当に大きな目の前の未来にあるのです」
ユーバージョンのような聖書アプリが成長し続け、今後も聖書のデジタル化が進めば、紙の聖書に取って代わるのだろうか。
米ダラス神学校で副学長(入学サービス・教育テクノロジー担当)と助教(神学研究)を務め、『People of the Screen: How Evangelicals Created the Digital Bible and How It Shapes Their Reading of Scripture』(スクリーンの人々:福音派はどのようにしてデジタル聖書を作り、それは聖書の読み方をどのように形作ったのか)』の著書があるジョン・ダイアー牧師は、米キリスト教メディア「クリスチャンポスト」(英語)の取材に応じ、紙の聖書がデジタル聖書によって時代遅れになることはないとする考えを示した。
「聖書は、書籍や電子書籍業界の大きな流れに従っているように見えます。当初、多くの人がキンドルやヌック、アイパッドが紙の本に完全に取って代わるだろうと予測していましたが、人々はそれから数十年たった今でも、聖書を含めた印刷された本を読み、学ぶのが好きなようです」
ダイアー氏は、デジタル技術によって、聖書は「もはや『単なるテキスト』ではなく、マルチメディアの範疇(はんちゅう)に入り、あらゆる媒体のあらゆる種類の物事が加えられています」と指摘した。
「聖書は紙、画面、音声で読む(聴く)ことができます。数世紀前に追加された大量の小さな数字(章節)、注釈、地図、さらには双方向性まであります。これらは全て役に立つし、プラスにもマイナスにもなります。重要なのは、私たちが注意を払うことです」
デジタル聖書の受け入れには利点もあるが、ダイアー氏は幾つかの懸念も示した。
「紙の聖書には、懸念があります。聖書を教会の共同体から持ち出し、非常に個人的なものにすること、章と節の番号を追加することで、テキストを切り刻み、段落や巻ではなく文を読むことを奨励すること、印刷されたページに常にアクセスできるため、暗記する聖句の量が減ることなどです。デジタル聖書は、そのあらゆる形態においてこれらの傾向を加速させ、より多くのアクセスを与える(これは素晴らしいことです!)一方で、同時に神の御言葉をより個人化・断片化し、さらに(暗記しないため)私たちの知らないものとする危険性があります」
それでもダイアー氏は、人々の聖書との接点を増やそうと努力している革新者たちを高く評価している。
「私は、御霊が私たちを導いてくれると信じ、新しいことに挑戦し、新しい聖書の関わり方を奨励している全ての革新者たちに感謝しています。私は利用者とプログラマーの双方に、私たちを聖書の世界に没頭させてくれるコミュニティーへと引き込むアプリやツールを開発する方法について考えることを勧めたいと思います」