英国のバークレイズ銀行が、同性に向かう望まない性的指向や性別違和(性同一性障害)に悩む人々にカウンセリングなどを提供しているキリスト教団体の口座を閉鎖した問題で、2万1500ポンド(約390万円)の賠償金と訴訟費用を支払うことで合意し、団体側と和解した。
口座を閉鎖されたのは、北アイルランドに拠点を置くキリスト教団体「コア・イシュー・トラスト」(CIT)。元ゲイを自認するマイク・デビッドソン氏が2011年に設立した団体で、団体のウェブサイト(英語)では、LGBTQ(性的少数者)としてのアイデンティティーや行動などから離れようとしている人々をサポートするとしている。
CITは、デビッドソン氏が17年に設立したロンドンに拠点を置く「国際治療カウンセリング選択連盟」(IFTCC)と共に、20年7月に口座閉鎖を通知された。
バークレイズ銀行は、LGBTQの権利擁護を訴えるイベント「プライド・イン・ロンドン」の大口スポンサーで、LGBTQ活動家らはこの年、両団体との関係を断ち切るよう求めるキャンペーンをSNSなどで展開していた。
バークレイズ銀行からCITに送られた20年7月13日付けの通知書には、次のように書かれていた。
「慎重に検討した結果、20年9月14日をもって貴団体の口座および全ての融資枠を閉鎖する決定を下しました」
バークレイズ銀行は、この決定についていかなる理由も説明しなかった。
デビッドソン氏はこれを受け、自身の宗教的信条や政治的見解に対する「不当な差別」だと主張し、バークレイズ銀行を提訴した。これに対し、バークレイズ銀行の弁護士は、銀行には2カ月前に通知すれば口座を閉鎖する権利があるとし、差別だとする主張を否定していた。
この訴訟は高等法院(高裁に相当)で審理される予定だったが、バークレイズ銀行は6月下旬、2万1500ポンドの賠償金を支払う和解案を提示。デイビッドソン氏がこれを受け入れ、和解が成立した。バークレイズ銀行はこの他、訴訟費用の支払いにも同意した。
デイビットソン氏はこの結果に満足し、次のように述べた。
「バークレイズ銀行の行動に見られるのは、私たちの社会と制度の中で、LGBTQの優位性を強要するストーンウォール(英国のLGBTQ権利団体)の誤った影響力の例です」
「バークレイズ銀行が惜しみない支援や支出をしているにもかかわらず、彼らのアジェンダは失敗に終わるでしょう。なぜなら、自身の進路を決めたり、役に立たないアイデンティティーから離れたりする自由は、銀行家や政治家、活動家やセラピストによってコントロールすることはできないからです。それは神から与えられた権利なのです」
「CITとIFTCCは、政府が強制するセクシャルアイデンティティーと、治療上の選択を認めないことに反対し続けます。私たちは、バークレイズ銀行が私たちの働きや慈善活動を『転向療法』と暗に非難することを拒否します」
デイビッドソン氏の訴訟を支援した英人権団体「キリスト教法律センター」(CLC)のアンドレア・ウィリアムズ最高責任者(CEO)は、次のように語った。
「これは、キリスト教慈善団体を標的にしたLGBTQ活動家たちによる組織的なキャンペーンであり、バークレイズ銀行はそれにまんまと引っかかったのです。バークレイズ銀行は、言論の自由、キリスト教の自由、マイノリティーの権利のために立ち上がるのではなく、LGBTQ活動家による脅迫的な戦術に屈したのです」
「もし銀行やその他のサービス提供者が、標的にされている善良で法を守る顧客から、そのキリスト教信仰を理由に銀行口座を取り上げ、それによって硬化した活動家をなだめるのであれば、この国は非常に暗い状況にあるといえるでしょう」