ナイジェリア中部カドゥナ州で誘拐されたキリスト教徒16人が、約1カ月にわたる監禁の後に解放された。国際人権団体「世界キリスト教連帯」(CSW、英語)によると、地元のイスラム教コミュニティーが協力したことで、身代金を全額支払うことができたためだという。
事件は5月7日、同州チクン地方行政区マダラにあるベゲ・バプテスト教会で発生。フラニ民族の武装集団が、日曜礼拝中の同教会を襲撃し、信徒約40人を誘拐した。大半は脱出したものの、16人が1カ月近く監禁されたままだった。
ナイジェリア・キリスト教協会(CAN)のカドゥナ州支部会長を務めるジョン・ジョセフ・ハヤブ牧師によると、地元のイスラム教徒らが身代金の支払いに必要な金銭を寄付したほか、誘拐犯らが要求していたオートバイを購入するなど、協力してくれたという。
「16人全員が家に戻ったことが確認でき、感謝しています。身代金(の調達)に貢献してくれた地元のイスラム教徒たちに感謝しています」とハヤブ氏は述べた。
CSWのマービン・トーマス創立会長は、地元のイスラム教コミュニティーの貢献を歓迎した上で、「(今回の貢献が)和解と協力の新たな時代の幕開け」となることに期待を示した。
CSWは、こうした異なる信仰共同体間の協力は、同州のナシル・エルルファイ前知事が最近、後継者やイスラム教指導者ら向けに配信した動画とは対照的だと指摘する。エルルフェイ氏は、同州の主要な政治分野でイスラム教徒の優位性を確保したことに満足感を示したとされ、在任中は宗教的優遇主義への懸念が高まっていた。
エルルファイ氏の動画での発言について、トーマス氏は「カドゥナ州南部における暴力が宗教的な分断とともに顕在化し続ける一方で、それを終わらせることのできる人々が他の課題を優先していることから、状況が膠着(こうちゃく)していることを裏付けています」と話す。
エルルファイ氏は、宗教を理由に自身の権利を否定された者はいないと主張していたが、在任中は同州南部のキリスト教徒が多い地域で武力攻撃が増加。数百の村が破壊されたり占拠されたりして、数千人が殺害されたり、家を失ったりした。