マイノリティ宣教センターの運営委員会は27日、出入国管理・難民認定法(入管難民法)改定案に反対する声明を発表した。改定案には、難民認定の申請中であっても、3回目以降の申請者については「相当の理由」を示さない限り送還可能とする内容が盛り込まれており、声明は「難民保護を放棄し、当事者を殺すことにさえつながりかねません」としている。
改定案は当初、オーバーステイなどで強制退去を命じられた外国人の長期収容問題を解消する目的などで、2021年に提出された。しかし、改定案提出後に、名古屋出入国在留管理局で収容されていたスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが死亡した事件などを受け、出入国在留管理局の非人道的な対応などに批判が集中し、廃案に追い込まれた。今回の改定案は一部修正が加えられているものの、2年前の改定案の骨格がそのまま維持されている。
声明は、「入管施設に収容された人々は、劣悪な環境、職員による不当な扱いを受けてきました」と指摘。ウィシュマさんの事件などを踏まえつつ、「(関係者は)猛省し、原因、事実を全面開示し、当事者とその遺族に誠意を持って謝罪しなければなりません」と訴え、「過去への反省なき新提案は、問題を覆い隠すのみで、改善には至りません」としている。
3回目以降の申請者を送還可能とすることについては、これまでにも3回目以降に難民認定されたケースがあることを指摘。申請回数に上限を定めることは難民保護の放棄だとし、難民認定制度の抜本的改革がなされていない改定案は廃案とすべきだとしている。
改定案は、長期収容問題を解消するため、申請者が施設外で支援者らの下で生活することのできる「監理措置」制度や、ウクライナ避難民など、紛争から逃れてきた人々を難民に準じて保護する「補完的保護対象者」制度の新設なども盛り込んでいる。しかし、声明はこれらの制度についても、「難民認定制度そのものを是正することによって全て解決できる」としている。
声明は、改定案が2年前に一度廃案に追い込まれた後、十分に当事者の意見が聞かれないまま、より劣悪な入管制度が構築されようとしていると批判。「日本の政府と国会は、当事者、支援者たちの声を反映し、国際基準に充分に則した立法に着手するべきです」とし、「国籍、人種、ルーツ、性など、各々の異なりで命に格差をつけず、人権が守られ、日本で共に生きることができるようにすることこそが必要です」と訴えている。
また、旧約聖書のレビ記19章33~34節「寄留者があなたの土地に共に住んでいるなら、彼を虐げてはならない。あなたたちのもとに寄留する者をあなたたちのうちの土地に生まれた者同様に扱い、自分自身のように愛しなさい」を引用。今回の改定案は「改悪案」だとし、日本に住む世界各国・地域にルーツがある人々の命を守る行動を起こすと宣言するとともに、彼らと「共に立ち、座り、食し、そして、命の叫び声に共鳴し共に生きる実践を続けます」としている。
一方、NHKなどの報道によると、衆議院法務委員会は28日、立憲民主党と共産党が反対したものの、自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党の賛成多数で改定案を可決した。
立憲民主党は改定案を巡る修正協議で、難民認定に関する第三者機関の設置検討などを求めていたが、与党側の修正案は不十分だとして反対に回ったため、要望は盛り込まれなかった。一方、難民認定が適正に行われるよう専門職員を育成する規定を盛り込むことなど、日本維新の会が求めていた要望は盛り込まれる形となった。
改定案は今後、5月上旬にも衆議院本会議で可決され、参議院に送られる見込み。