ケニア南東部の森の中にある集団墓地から25日までに、子どもを含む89人の遺体が発見された。餓死すれば天国に行けるなどと説いていた、ケニアのキリスト教系カルト教団「グッド・ニュース・インターナショナル・ミニストリーズ」(GNIM)に関係する犠牲者とみられている。
米CNN(日本語版)によると、森の中の集団墓地が発見されたのは21日。生存者もおり、これまでに34人が救出されている。教団指導者のポール・マッケンジー・ヌセンゲ容疑者は既に逮捕されている。ヌセンゲ容疑者が森の中に所有する広大な土地に集団墓地があるという通報があったことで、捜索が行われたという。
英BBC(日本語版)によると、餓死した疑いのある人の遺体が最初に発見されたのは15日。4人の遺体が発見された後、ヌセンゲ容疑者は逮捕された。一方、ヌセンゲ容疑者は、GNIMは2019年に閉鎖したと力説し、不正行為はないと主張しているという。
BBCが現地紙「ザ・スタンダード」の報道として伝えたところによると、ヌセンゲ容疑者は、3つの村をナザレ、ベツレヘム、ユダヤと名付け、池で洗礼を授けた信者に対し断食するよう指導していたという。
集団墓地が見つかったのは、インド洋に面した南東部マリンディ近くのシャカホラの森。そのため、GNIMは「マリンディカルト」とも呼ばれている。
集団墓地の捜索に参加するケニア赤十字は行方不明者の報告を受け付けており、24日付の声明(英語)によると、同日までに212人(男性99人、女性113人)の行方不明者が報告されており、このうち生存が確認されたのは2人のみ。そのため、今後も犠牲者の数は増える可能性がある。
CNNによると、キトゥレ・キンディキ内相は、「殺人のために聖書が利用され、罪のない市民の殺戮(さつりく)が広がるという事態は容認できない」と強調した。
GNIMのホームページ(英語)によると、GNIMはヌセンゲ容疑者が2003年に設立。マリンディに本部を置き、ケニア各地に支部があるという。本部には千人以上、各支部には計3千人以上の信者がいるとしている。
2019年の国勢調査(英語)によると、ケニアは人口の約3割がプロテスタント、約2割がカトリック、約2割が福音派、約1割がその他のキリスト教派とされ、人口の8割以上がキリスト教を信仰している。
一方、BBCによると、統制されていない危険な教会やカルトに大勢が誘い込まれる事件が、過去に複数発生しているという。