国軍と準軍事組織による戦闘が続くアフリカ北東部のスーダンで、現地のキリスト教徒は、拡大する衝突と情勢不安を過激なイスラム主義者が悪用する恐れがあるとして、祈りの支援を訴えている。
キリスト教迫害監視団体「オープンドアーズ」によると、スーダンには約200万人のキリスト教徒がいる。彼らは、過激なイスラム主義者が現在の混乱を利用して、過酷なシャリア(イスラム法)による統治へ回帰することをもくろむのではないかと恐れているという。
1956年に英国とエジプトの共同統治から独立したスーダンは、北部のイスラム教徒主体のアラブ系住民が主導する政権が83年、全土にシャリアを導入。これに、キリスト教や伝統宗教を信仰する南部のアフリカ系住民が反発し、独立後に一時収束していた南北間の内戦が再発、2011年の南スーダン独立につながった経緯がある。
オープンドアーズの東アフリカ地域担当研究員であるフィキル・メハリ氏は、スーダンが国として崩壊することは、スーダン国民に「計り知れない苦しみ」をもたらすだろうと警告する。
メハリ氏は、スーダンは「非常に困難な時期」にあり、スーダン国民は国の将来に関して「混乱」した状態で生活していると話す。戦闘は既に現地のキリスト教徒にも影響を及ぼしており、牧師と信徒らは互いに引き離され、屋内に身を隠しているという。
「私が話している教会指導者たちは、全ての人に祈るよう促しています。多くの人が、スーダンが崩壊しかねないと恐れています。この混乱から過激なイスラム主義者が台頭し、厳しいシャリアを押し付けるかもしれません。これはキリスト教徒にとって致命的なことです」
スーダンでは、アブドルファタハ・ブルハン将軍が率いる国軍と、モハメド・ハムダン・ダガロ司令官が指揮を執る準軍事組織「即応支援部隊」(RSF)の間で激しい戦闘が行われている。衝突の背景には、両指導者の権力争いがあるとされている。
メハリ氏は、どちらの側が勝利しても、キリスト教徒の身が案じられるとしている。
「独裁者のオマル・バシル元大統領が追放されたとき、暫定政権とそれに続く選挙が約束されました。それらは、キリスト教徒に対する迫害の減少に伴い、私たちに希望を与えました。しかし、それも長くは続かず、現在どちらの指導者も、私たちに約束したような自由を提供しているとは思えません」
「私たちの最大の懸念は、この混乱により、スーダンを厳格なシャリア統治下に戻す機会を過激なイスラム主義者に与えてしまうことです。彼らは、それが平和と安定をもたらすと人々に約束していますが、キリスト教徒をはじめとする多くの人々にとって、それは計り知れない苦しみをもたらすことになるでしょう」
「スーダンの教会指導者たちは、私たちに、このようなことが起こらないように、そしてイスラム主義者がこの不安と不安定を利用しないように、祈りの支援を求めています」
英国に拠点を置くキリスト教人道支援団体「クリスチャンエイド」によると、隣国の南スーダンでは、この衝突により難民が国境を越えて来ることを懸念し、警戒態勢が取られている。
クリスチャンエイドの南スーダン責任者であるジェームズ・ワニ氏は、次のように述べている。
「南スーダンは、既に深刻な食料危機に直面しています。人道支援資金が大幅に不足しているのです。もしスーダンの衝突がすぐに止まらず、難民が大量に国境を越えるようになれば、現在の人道危機はさらに悪化するでしょう」