軍事政権下にあるミャンマーの裁判所は7日、昨年12月に逮捕・勾留されていたカチンバプテスト連盟(KBC)前会長のフカラム・サムソン牧師に、禁錮6年の判決を下した。サムソン牧師を巡っては、米政府が釈放を要請していた。(関連記事:ミャンマーのカチンバプテスト連盟前会長、空港で逮捕 人権団体が即時釈放を呼びかけ)
国際人権団体「世界キリスト教連帯」(CSW、英語)によると、同国北部カチン州の州都ミッチーナーの裁判所はサムソン牧師に対し、不法結社法、刑法、テロリズム法に基づき判決を下したという。
カチン民族協議会(KNCA)の議長を務めるサムソン牧師は、少数民族の民兵組織のメンバーと面会したことや、ミャンマーの民主派らがつくる文民政府のメンバーと祈祷会を開催したことを理由に逮捕された。
CSWの東アジア担当シニアアナリストであるベネディクト・ロジャーズ氏は、今回の判決について「理不尽な正義の茶番劇」だと批判。ミャンマーに関する著書を3冊執筆し、サムソン牧師の友人でもあるロジャーズ氏は、「サムソン牧師は徹頭徹尾、非暴力の牧師で、正義と人権、平和をたゆまず勇敢に擁護する人物」だと述べた。
2021年2月に国軍がクーデターを起こして以降、ミャンマーでは、現地で「タッマドー」と呼ばれる国軍と、少数民族の民兵組織の対立が激化している。これらの民兵組織は、民主化デモを支援してきた。
ロジャーズ氏は、「彼(サムソン牧師)は、ミャンマー国軍がミャンマー国民に対して行った野蛮な残虐行為に対して勇気を持って発言しただけで投獄された」と述べている。
サムソン牧師は、KBCの会長や主事を務めてきた経験があることから、地元の宗教・政治指導者の集まりであるKNCAを導いている。KNCAは、カチン独立軍(KIA)の政治部門であるカチン独立機構(KIO)と地元民の意思疎通を促進する活動を行っている。
サムソン牧師は昨年10月、同州ヒパカントで行われたKIOの記念式典を国軍が空爆した際、犠牲となった60人余りの人々の葬儀を手配した。また、重傷者が緊急医療を受けられるようにも手配するなどした。事件の1カ月後には、ミャンマー教会協議会がミッチーナーで開催した犠牲者追悼の祈りの集いにも参加していた。
米国務省のネッド・プライス報道官は2月に行われた記者会見(英語)で、サムソン牧師の逮捕を非難した。
プライス氏は当時、「私たちはサムソン牧師の安否を非常に憂慮しており、(ミャンマー)政権が全ての容疑を取り下げ、サムソン牧師を即時かつ無条件で釈放するよう求めます。わが国の協力国や同盟国もこの要請に加わるよう強く求めます」と述べていた。