ゴスペル(福音)のメッセージと音楽があふれる礼拝形式のイベント「ニューソング・ゴスペル・セレブレーション」が11日、東京・渋谷の東京山手教会で開催された。東京都内を中心にゴスペル教室などを手がける一般社団法人GOSMACが主催する初めての試みで、約300人が参加した。
イベントには、「ゴスペル王子」として日本のテレビ番組にも出演するジャマイカ出身のジョン・ルーカスや、共に本場米国でゴスペルを学んだブレッドブラザーズの塚本タカセ、腰トモノリ、日本のゴスペル界の第一人者として知られる亀渕友香の愛弟子であるのはらヒロコらが出演。3部構成で行われ、各部でパワーあふれるゴスペルが歌われるとともに、聖書からゴスペルのメッセージが伝えられた。
この日は、東日本大震災が発生してから満12年の日でもあり、東京山手教会の小野團三(だんぞう)牧師は冒頭の祈りで、震災により多くの命が奪われたことにも言及。一人一人の命は神から与えられたものであるとし、「こうしてこの時、この場を与えられ、主なる神を思い起こし、心からの賛美をささげられることを心から感謝します」と述べた。
第1部で歌ったのは、ジョン・ルーカスとGOSMACのクワイア。ルーカスは来日してから既に20年以上たち、これまで主に仙台市で活動してきたことから震災にも言及。「まだ12年、もう12年。いろいろな感情があります。私の第二の故郷は宮城県仙台市です。今日、このステージでみなさんと一緒に歌えるのはすごく特別な意味を持っています。今日、この渋谷の会場から被災地にエールを送りたいと思います」と述べ、「Falling In Love With Jesus」など4曲をクワイアと共に歌った。
メッセージを伝えた天野真信牧師(ニューソングチャーチ東京)は、自身を裏切ったイスカリオテのユダさえも愛し抜かれたイエス・キリストの姿や、99匹の羊を置いて、失われた1匹の羊を探す羊飼いの例えを話しつつ、「神はあなたを愛することをやめない」と強調。自身がキリストを初めて信じたときの経験を話しつつ、「(キリストを)ぜひ信じてみましょう。必ず変えられます」と勧めた。
第2部には、ブレッドブラザーズがGOSMACのクワイアと共に出演。ギタリストでもある塚本タカセによる伴奏で「Holy Spirit」など2曲を歌い、ゴスペルピアノの第一人者として知られる山本裕太の伴奏で、米国の教会で広く歌われているという「Total Praise」を歌った。
2019年に、相方の腰トモノリと共に洗礼を受けたという塚本は、音楽修行のため単身渡米した際に通ったニュージャージー州の黒人教会での経験に言及。「神様から頂いている愛をそのまま周りに伝えているだけよ」と話しながら、教会員や家族に献身的に仕えていた教会のミュージックディレクターの姿に影響を受けたことを話した。
第2部でメッセージを語ったのは、超教派の神学校「ワーシップ!ジャパン宣教人財育成学院」の学長を務める佐藤ヒロアキ牧師(象潟〔きさかた〕キリスト教会)。小学3年生の時に拒食症となり、体重が10キロ近くまで落ち、死を意識した経験や、大切な人の死に自身が間接的に関わっていたことを知り、気付いたら教会で泣き崩れていた過去、不眠症から精神疾患を患うも、聖書を学ぶ中で回復することができた体験などを語りつつ、キリストは一人一人を裁くためではなく、救うために来られたと伝えた。
また、キリストを信じることを、空中ブランコに例えて説明。「勢いよく、勇気を持って足を踏み出し、手を伸ばしたら、受け手ががっちりキャッチしてくれるんです。勇気を持って『イエス様を信じます』と言ったら、イエス様が手をがっちりつかまえて離さない。これが信頼する信仰です。これで救いを受け取れるんです」と伝えた。
以前は両親との間に強い確執があったが、両親や祖父母もクリスチャンとなり、今は非常に関係が良いという佐藤牧師。また、かつて殺人未遂罪で逮捕され、面会に訪れた留置所で共に声を上げて祈ったことがあるという知人も、今では牧師になっていることを紹介。「愛ってリアルなんです。人を変える力があるんです。癒やす力があるんです。だからゴスペルって素晴らしいんです」と話した。
第3部では、のはらヒロコとGOSMACのクワイアが、会場を巻き込みつつ、ブルックリン・タバナクル・クワイアの「Now I'm On My Way」や、シーシー・ワイナンズの「Believe For It」など3曲を熱唱。GOSMAC代表理事で伝道者のジョシュア佐佐木氏が、ゴスペルの意味を分かりやすく解説した。
佐佐木氏は、ゴスペル(福音)の意味は「Good News=良い知らせ」であるとし、神からの一方的なプレゼント(恵み)だと説明。このプレゼントは、善行に対する報いでもなければ、人間が当然受けるべきものでもない。報酬や権利としてではなく、プレゼントとして心から受け止めるべきものだと伝えた。
また、聖書が言う「罪」について、佐佐木氏は3種類あると話す。1つ目は「行動で犯す罪」。罪としてすぐに思い浮かぶ殺人や窃盗などの犯罪が、この「行動で犯す罪」に当たる。一方、実際に殺人を犯さないまでも、他者に対して殺意を抱くこともある。これが2つ目の「心の中で犯す罪」だという。そして、助けが必要な人を助けないなど、3つ目の「行動しない罪」もあり、「聖書が私たちに教える罪は範囲が広い」と佐佐木氏は言う。1日に数回であってもこれらの罪を犯して生き続けるならば、人間はその生涯で、自力では償えないほど多くの罪を犯して生きることになる。
これに対し、聖書が語る神は「愛の神」である一方で「正義の神」でもある。佐佐木氏は、「神の目から見て私たち一人一人は高価で尊く、神はどんなことがあっても私たちを見捨てず、愛し続けてくださる」が、「神は神であるが故に絶対的な正義者であり、私たちが犯し続けている罪を、いい加減になかったことにはなさらない」と言い、これが「神のジレンマ」だと話した。
この神のジレンマの解決として来られたのがイエス・キリストだ。キリストは、神自身が人となってこの地上に来られた存在であり、人間の全ての罪を背負い、身代わりとなって十字架上で死なれた。「本当は私たち一人一人が罪の代償を払わないといけないのに、その罪の代価の支払いをしたのが神ご自身」と佐佐木氏。「イエス・キリストの十字架を信じるだけで、もう一度神のもとに帰れる、天国に行ける。もっと言えば、神がもともと私たちに与えてくれていた永遠の命を取り戻すことができる。これは神からの一方的なプレゼントです」と言い、「これがゴスペルです」と伝えた。
最後には、出演者全員に加え、ワーシップ!ジャパン宣教人財育成学院とニューソングチャーチ東京のワーシップチームが登壇。「Here I Am To Worship」や「You Are Good」といったワーシップソングを会場も総立ちになって歌った。