進化論の実態を明らかにし、創造論を論証する講演会「科学の本質と創造論」(インターナショナルVIPクラブ主催)が1月29日、オンラインで開かれた。60人が参加し、電子物性工学が専門の阿部正紀・東京工業大学名誉教授が講演。進化論の実態を分かりやすく解説しながら、創造論との違いについて論じた。
パラダイムとしての進化論
まず阿部氏が紹介したのは、1960年代に米国の科学史家トーマス・クーンが提唱した「パラダイム」という概念だ。後に、考え方の枠組みといった意味で一般でも広く用いられるようになったが、もともとは科学史の用語で、「ある時代に科学者集団を支配している主要な理論と、それを支える世界観を含んだ枠組み」を指す。
「ここで重要なことは、パラダイム、すなわち主要な科学理論が、世界観に支えられていること」と阿部氏。一般的に科学は、客観的な観測データと合理的な論理だけに基づき、絶対的に正しい真理を明らかにしていると考えられてきた。しかしクーンは、進化論やビッグバン宇宙論をはじめとする科学理論は、その根底で主観的な世界観に立脚しているため、たとえ客観的なデータで反証されても、その世界観の枠内で手直しされるか、それができない場合、反証事例が先送りされて、理論自体は生き延びることを明らかにした。
進化論の化学進化説は「実証できる事実ではない」
阿部氏は、生命が化学反応によって生じたとする進化論の化学進化説について、「反証されていますが、生き延びが図られています」と指摘。「情報は、意思と目的を持つ知的存在のみが発信し、化学反応では生じません。これは観測から示され、誰もが認めざるを得ない事実です」と話した。
化学進化説では、海底や間欠泉など地球上のさまざまな場所のみならず、宇宙にまで生命の起源を求める説が提唱されているが、どれも決め手となる確固たる証拠がなく、遺伝情報が記録されているDNAの起源を説明できていない。最も有名な化学進化説で、高校の教科書にも掲載されているミラーの原始スープ説も、実験的研究の草分けとして教科書に掲載されてはいるが、既に否定されている。
そのため、進化論を支持する学者たちは、「自然現象(化学反応)には情報を生み出す力が存在する」という作業仮説を受け入れることによって、この難題を先送りしているのが実態だという。作業仮説とは、研究や実験を進めるために、証明はできないが暫定的に有効と見なして導入する仮説をいう。「進化論パラダイムは、全ての事柄を自然現象だけに基づいて説明すべきとする、いわゆる自然主義の世界観に立脚しています。従って、進化論者は反証されても化学進化説に固執しているのです」
阿部氏は、化学進化説について「実証できる事実ではない。専門家を含めた科学者たちによって広く受け入れられている仮説である。それを支持する直接的な証拠はない。この分野の研究がいかに推論に基づいて行われているかを認識することが大切」とする進化生物学者フランクリン・ハロルド氏(米コロラド州立大名誉教授)の言葉を引用。「作業仮説を導入し、目的を持たない化学反応が情報と生命を生み出したと信じる化学進化説と比べて、意思と目的を持つ創造主が情報と生命を創造したと信じる創造論の方が、はるかに素直で受け入れやすい」と話した。
「科学はあらゆる疑問に回答を与える」は間違い
「客観的な自然現象だけで説明しようとする進化論と比べて、創造論は神に対する信仰という主観的要素によって支えられているから信頼できないという批判に、何と答えたらよいか」との参加者からの質問に、阿部氏は「実は自然科学で生命の起源を説明すべきだと考えること自体が、大きな問題を抱えている」と答えた。
「自然科学はこれまで、対象を物質的世界に限定し、観測や実験で確かめられ、法則(数学)で記述できる現象だけを扱うことによって力を発揮してきました。従って、自然法則を超越した原理に支配されている倫理、道徳、芸術などの精神的世界の事柄や、神、救い、祈りなどといった霊的世界の事柄を扱えません。つまり、自然科学は、神の業と深く関わりあっている生命の起源を扱えないのです」
阿部氏は、「科学はいかなる事象も取り扱える確固とした学問体系であるなどと見なすことは誤解である」とする哲学者、黒崎宏氏(成城大名誉教授)の言葉を紹介し、「科学はあらゆる疑問に回答を与えると信じる科学万能主義が現代社会を支配しています。このため、生命の起源に対しても、進化論で説明できると多くの人々が信じているのです」と語った。
次回は、DNAだけでなく、たんぱく質などを含めた生体分子と細胞の起源について説明しながら、さらに進化論の実態に迫る。次回も講演する阿部氏は、「あら探しをするような気持ちで進化論の不完全さを見つけようとするのではなく、学問としての進化論に敬意を払ってその実態を学ぶことが大切だと考えています。そうすればおのずと、進化論の証拠が科学的に不完全であることが明らかになり、それによって創造論に対する確信が深められていくことを願っています」と話した。
今回の講演内容や次回の案内など、講演会に関する情報は、ホームページで随時発信していくという。