現存するものとしては、最も欠損の少ない世界最古のヘブライ語聖書とされる「サスーン写本」が15日、約40年ぶりに公開された。競売大手サザビーズが、米ニューヨークで5月に競売を行うのを前に公開した。競売前には、英国のロンドン、イスラエルのテルアビブ、米国のダラス、ロサンゼルス、ニューヨークを巡る一般展示も行われる。
サスーン写本は、9世紀後半から10世紀初頭に作成されたと考えられており、ヘブライ語聖書全24巻を含む単一の写本としては、世界最古とされる。名称は、ユダヤ教古文書収集家のデービッド・ソロモン・サスーン氏(1880~1942)にちなむ。サスーン氏は1929年に入手。サスーン氏の個人コレクションの中でも最も貴重な古文書の一つだったという。
サザビーズ(英語)によると、全24巻中、欠損しているのは12葉のみ。欠損のない完全体のヘブライ語聖書としては最古とされる「レニングラード写本」は1008年の作成で、サスーン写本はそれよりも約1世紀古い。
現存する最古のヘブライ語聖書としては、930年ごろに作成された「アレッポ写本」が有名だが、約4分の1が損失しており、487葉中300葉以下しか残っていないという。
サザビーズは、3千万~5千万ドル(約40億~67億円)の落札価格を予想しており、歴史文書としては史上最高額で落札される可能性もある。
アート系のマーケットサイト「アートネット」(英語)によると、1994年にはマイクロソフト社の創業者であるビル・ゲイツ氏がレオナルド・ダ・ビンチの手稿を3080万ドル(約41億円)で購入。2021年には、米資産家のケン・グリフィン氏が米国憲法の初版を4320万ドル(約58億円)で購入している。
ヘブライ語聖書は、トーラー(律法)5巻、ネビイーム(預言者)8巻、ケトゥビーム(諸書)11巻の計24巻で構成される。
トーラーは、いわゆる「モーセ5書」で、創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記。ネビイームは、ヨシュア記、士師記、サムエル記、列王記、イザヤ書、エレミヤ書、エゼキエル書に、12小預言書が1巻でまとめられている。ケトゥビームは、詩編やヨブ記、雅歌、ダニエル書などの旧約聖書のその他の書。
アートネットによると、サスーン写本は創世記の最初の10章が欠損しているという。
サスーン写本の競売は、現地時間5月16日午前10時(日本時間同日午後11時)から行われる。