新型コロナウイルスのパンデミックは、宗教にどのような影響を与えたのか。米シンクタンクが最近発表した調査結果によると、礼拝に出席しない米国人が、パンデミック以降、急増したことが明らかになった。
米シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所」(AEI)が5日に発表した調査結果(英語)によると、過去2年間に礼拝に一度も出席していないと回答した米国人は、パンデミック前(2018~20年3月)は4人に1人(25%)だったが、22年4月には3人に1人(33%)まで増加した。
一方、宗教に熱心な人々の間では、それほど大きな変化は見られなかった。週に少なくとも1回は礼拝に出席すると答えた米国人は、パンデミック前は26%で、22年4月でも24%とわずかに減少しただけだった。しかし、パンデミックにより「出席率が低下した米国人成人は、出席率が上昇した米国人成人の2倍」となり、パンデミックは礼拝出席率を全体的に引き下げる影響を与えたことが分かった。
最も大きな変化が見られたのは若年層(18~29歳)で、パンデミック前は30%が礼拝に出席していないと回答していたが、22年4月には43%に急増した。
これに対し、シニア層(65歳以上)は、パンデミック前は20%で、22年4月は23%と、3%の増加にとどまった。
「米国人の中で、若年層ほど礼拝出席率が大きく変化したグループはない」と報告書は指摘している。
リベラル派も、パンデミックにより礼拝に出席しない人が急増したグループの一つで、パンデミック前は31%だったのが、22年4月には46%に増加した。
一方、礼拝出席とは対照的に、宗教的アイデンティティーには大きな変化は見られなかった。パンデミックの前後で改宗などの宗教上の変更はほとんど見られず、白人主流派キリスト教徒と白人福音派キリスト教徒が2大宗教グループとしてとどまった。
礼拝出席と宗教的アイデンティティーの傾向の違いは、「(宗教上の)アイデンティティーと経験の切り離し」を示唆すると報告書は指摘している。
「新型コロナウイルスのパンデミックは、宗教的礼拝を含む米国社会の大部分を崩壊させたが、既存のパターンを完全に覆したというよりも、むしろ既存の宗教的変化の傾向を加速させた。少なくとも礼拝出席という点では、パンデミックは、定期的な出席に対して最も弱い関与を示していた人々を押し退けたようである」