地球上に生息する約800万種の生物のうち、約100万種が絶滅の危機にあるとされる中、生物多様性に関する2030年までの具体的な行動目標が定まったことに対し、福音派の世界組織である世界福音同盟(WEA)が歓迎の意を表明した。
2030年までの行動目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」
カナダのモントリオールで7日から約2週間にわたって開催された生物多様性条約の第15回締約国会議(COP15)は、最終日の19日、2030年までの具体的な行動目標を含む「昆明・モントリオール生物多様性枠組」(GBF、英語)を採択した。
GBFは、2050年までに達成を目指す4つの「ゴール」と、そのための具体的な行動目標として2030年までに達成を目指す23の「ターゲット」などを定めている。
23のターゲットには、2030年までに、▽海と陸のそれぞれ少なくとも30パーセントを健全な生態系として保全する、▽外来種の侵入を半減させる、▽環境への栄養分流出と農薬リスクを半減させる、▽気候変動の生物多様性への影響を最小化させる、▽ビジネスによる影響評価・情報公開を促進する、▽食料廃棄を半減させる、などを盛り込んでいる。
目標達成に向け福音派のパートナーと協力
WEAは今回、COP15に代表2人を派遣。福音派の立場から、発表を行うなどした。
COP15に出席したWEAのグローバル・アドボカシー・ディレクターを務めるジャネット・エップ・バッキンガム氏は、GBFの採択を受けた発表(英語)で次のように述べた。
「世界は神によって創造され、人類が手入れをして育むために与えられたとクリスチャンは理解しています。私たちは、多くの種が絶滅したり、絶滅の危機にさらされたりしているのを見て落胆しています。世界の国々はGBFの中で、種とその生息地を保護することを約束しました」
同じくCOP15に出席し、発表を行ったWEAサステナビリティーセンターの共同ディレクターであるクリス・エリサラ氏は、次のように述べた。
「生物多様性条約が世界的な合意を得るまでの道のりは、長く困難なものでした。それは、この条約が焦点を当てている問題が、道徳的、倫理的、科学的、技術的に複雑であるためです。この問題は地球上の全ての生物の命と相互依存的に関係しており、人間の生活、文化、社会、経済をも含んでいます。
そればかりでなく、生物多様性条約は、徹頭徹尾、包括的なアプローチを取りました。WEAのような信仰に基づく団体をはじめ、あらゆる意見に耳を傾けています。私たちは新しい枠組みの成立を喜ぶとともに、今回の枠組み形成のステップに私たちを加えてくれたこの条約に感謝しています。
私たちは今後、『ア・ロウチャ』や『リニュー・アワ・ワールド』(いずれもキリスト教の自然保護団体)、『ローザンヌWEA被造物ケアネットワーク』(LWCCN)に加盟する世界各地の数百もの団体、キリスト教大学などの研究・教育機関、民間部門で働くクリスチャンなど、他の福音派のパートナーと共に、GBFのゴールとターゲットを実現するために活動を強化していきたいと思います。また、神からの贈り物である被造物を大切にするため、必要に応じて、より適切で、より高いゴールとターゲットを目指して邁進(まいしん)していきます」
2020年までの行動目標「愛知目標」は全て未達成
生物多様性に関する目標は、2010年に名古屋市で開催されたCOP10で、2020年までに20のターゲットの達成を目指す「愛知目標」が採択されていたが、いずれも未達成に終わっていた。
「愛知目標」の後継目標を定めるCOP15は本来、2020年10月に中国の昆明で開催予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大のため延期。昨年10月に、昆明を舞台にオンライン形式で第1部が開かれた。
一方、対面形式での第2部は今年4~5月に昆明で開催される予定だったが、新型コロナウイルスの再流行を受け再延期。引き続き中国が議長国を務めながらも、開催地を条約の事務局があるモントリオールに変更して行われた。