安楽死の是非を巡って、反対するバチカン(ローマ教皇庁)のキャンペーンの象徴的な存在として注目を集めていた、17年間昏睡状態であったイタリア人女性のエルアナ・エングラロさん(38)が9日、同国北東部ウディネにある病院で死去した。時事通信が同日伝えた。
エングラロさんは交通事故のため92年から昏睡状態になり、以前入院していたカトリック教会が運営する病院では、安楽死反対キャンペーンの象徴的存在となっていた。カトリック信者が大多数のイタリアでは安楽死は違法となっているが、延命拒否の権利は認められている。そのため、十数年にわたって植物状態にあったエングラロさんの対処を巡っては、政界までも巻き込んだ議論が起きていた。
エングラロさんの介護を長年にわたってきた父親は、娘の「死ぬ権利」を求めて提訴し、昨年秋には破棄院(最高裁に相当)で、延命措置解除を認める判決が出ていた。
これを受けて、右派のベルルスコーニ政権は6日、延命治療の継続を求める政令を閣議決定。しかし、左派のナポリターノ大統領が署名を拒否したため、政令は無効となる事態となっていた。9日には、政令を法案に切り替えての審議が上院で始められたが、病院ではすでに延命措置の解除が行われ、エングラロさんはその生涯に幕を下ろすことになった。