米国のジョー・バイデン大統領は13日、「結婚尊重法」に署名し、既に2015年の連邦最高裁判決によって連邦レベルで認められていた同性婚を法制化した。
同法は、同性婚に対する反対派が多い共和党の一部の議員も賛成に回る形で、上院は11月29日に賛成61、反対36で、下院は12月8日に賛成258、反対169で可決。正式な成立まで、バイデン大統領の署名を待つ状況だった。
同法が成立したことで、結婚を1人の男性と1人の女性の結合としていた「結婚防衛法」が正式に廃止されることになった。結婚防衛法は、米国で同性婚に関する議論が活発化し始めていた1996年、当時のビル・クリントン大統領が署名し成立。その後、2013年に連邦最高裁が違憲としていた。
結婚尊重法の成立を目指す動きは、連邦最高裁が6月、中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド」裁判の判決(1973年)を覆したことを受けて起こった。
連邦最高裁は現在、判事9人中6人が保守、3人がリベラルで、保守が優勢。そのため、民主党やリベラル派の間では、同性婚を認めた「オーバーグフェル対ホッジス」裁判の判決(2015年)も将来的に覆されるのではないかと懸念する声が高まっていた。
また、11月の中間選挙の結果、下院は来年1月から共和党が多数派となるため、上下両院で民主党が多数派を占める会期内での成立を目指したとされる。
結婚尊重法は、各州に同性婚の合法化を義務付けるものではないが、合法州での婚姻を他州でも認めるよう定めている。
同法はまた、異人種間の結婚も合法であることを明記した。異人種間の結婚は、1967年の連邦最高裁判決で合法化され、既に米国社会に定着しているが、これまで連邦レベルでの法制化はされていなかった。
同法の成立に対しては、性的少数者(LGBTQ)のコミュニティーやリベラル派を中心に歓迎する声がある一方、保守派からは懸念する声が上がっている。
信教の自由を巡る訴訟を数多く支援している保守系キリスト教団体「自由防衛同盟」(ADF)は声明(英語)で、同法は多くの米国人の信教の自由を脅かすものだとし、「欺瞞(ぎまん)的な名称の連邦法」だと批判した。
ADFのライアン・バンガート上級副会長(戦略的イニシアティブ担当)は、同法について「同性カップルに何の追加的な保護も利益も与えない、問題解決のための解決策である。しかし、私たち一人一人に帰属する憲法上の自由は損なわれている」と指摘。「ADFは、この法律のために標的とされる可能性の高い人々を擁護し、全ての米国人の言論と信教の基本的な自由を支持することに引き続き尽力する」と語った。