世界平和統一家庭連合(旧統一協会)など、主に社会的な問題が指摘されている宗教を信じる親の元に生まれた「宗教2世」が、親から宗教活動や信仰生活を強制されるのは「宗教虐待」だとして、法律や行政の整備を求める署名活動を行っている。既に7万筆を超える署名が集まっており、28日には署名と陳情書が厚生労働省や文部科学省などに提出した。
署名を呼びかけているのは、両親が旧統一協会の信者である高橋みゆきさん(仮名)。高橋さんは、旧統一協会で合同結婚式をした両親の間に生まれた「祝福2世」と呼ばれる人で、署名の呼びかけ文では、自身も旧統一協会に人権を大きく蹂躙(じゅうりん)されてきたと紹介している。
同じく旧統一協会の信者を親に持つ山上徹也容疑者が安倍晋三元首相の銃撃事件を起こして以降、インターネットの署名サイト「Change.org」で賛同を呼びかけてきた。署名数は30日現在、7万1千筆を超えている。
署名サイトでは、「日本における一部の宗教信者の子ども(宗教2世)は『子どもが信仰を望まない場合でも宗教活動や信仰生活を強制させられる』問題を抱えています」とし、「家庭内という閉鎖的な環境下で、拒否権のない信者の子どもの基本的人権(信教の自由・幸福追求権等)が侵害されています」と訴えている。
また、「虐待の原因が宗教活動に基づくものであっても、児童虐待防止法上の虐待の定義に該当する行為があれば、通常の児童虐待と同様の措置をとるのが行政の義務」だと指摘。しかし現状では、「宗教2世」が公的機関に相談しても、「宗教の問題には対応できない」「信仰している人の信教の自由を侵害できない」などと言われ、門前払いされるケースが多いという。
その上で、「宗教2世」の基本的人権を守るために、1)虐待の定義に「宗教虐待」を追加、2)子どもに対する宗教虐待の禁止・刑事罰化、3)他者に対して虐待を行うよう指導する行為の厳罰化――の3項目を提言しており、今後さらに項目を追加するとしている。
東京新聞やNHKによると、28日には7万655筆の署名と陳情書を提出した。提出後に開いた記者会見で高橋さんは、両親がこれまでに数千万円を献金して苦しい生活を余儀なくされてきたことや、自由恋愛禁止など、生活に大きな制約を受けてきたことなどを説明。「未成年だと、何かおかしいと思っても、親からの要求を全て拒否することはなかなか難しい」「信仰の強制などは親子の問題にとどまらず、宗教組織が教義や指導という形で仕組む組織的虐待」などと語った。