オーストラリアを拠点とする世界的メガチャーチ「ヒルソング教会」の創設者であるブライアン・ヒューストン牧師が、女性に関わる不祥事のため3月に国際主任牧師を辞任してから初めて講壇に立った。ヒューストン牧師は説教で、神は人がするように見捨てることはしないとし、失敗を乗り越えていく人生を語った。
ヒューストン牧師は8月21日、米ワシントン州シアトルの教会「クリスチャン・フェイス・センター」(英語)で、「あなた自身よりも長く残る遺産」(英語)と題して説教。過ちや失敗、心の傷を、後に残る自身の「遺産」としてはいけないと語った。
「遺産とは、神の目的に従って人生を生きるという姿勢に他なりません。目的と運命、そして遺産が衝突するとき、それは燃え上がる力のようになります。私たちが自分の人生を神の目的に沿わせるとき、遺産は生み出されます。それは、私たちができる最も素晴らしい生き方です」
「私たちは決めることができます。自分の過ちや失敗、ここでの失敗、あそこでの傷、ここでだまし取られた、あそこで怒られた、そのようなことに自分の遺産を決めさせることもできます。しかし、それらは私たちの遺産を決めるべきものではありません。遺産はそれ以上のものなのです」
ヒューストン牧師は昨年8月、父親で牧師であった故フランク・ヒューストン氏が1970年代に犯した児童性的虐待を隠蔽した罪で起訴された。無罪を主張しながらも、翌9月にはヒルソング教会の役員を辞任。今年1月には、年内に同教会の指導的立場から退くと発表していた。
しかし、ヒルソング教会は3月、ヒューストン牧師が2019年のカンファレンス期間中、アルコールと抗不安薬の影響下にある中、面識のない女性がいるホテルの部屋に入り40分間いたとして、同教会の牧師行動規範に違反していたことなどを発表。これを受け、ヒューストン牧師は同月、辞任を申し出、同教会から完全に身を引いた。
ヒューストン牧師と女性は共に性的関係については明言していないが、ヒルソング教会のフィル・ドゥーリー暫定国際主任牧師は、アルコールの影響下にあったため、2人の説明は完全に信頼できるものではないとしている。
さらにもう一つの不祥事として、ヒューストン牧師は13年、教会スタッフに対し「不適切な」ショートメッセージを送っていたことも明らかにされた。ドゥーリー牧師によると、ショートメッセージの内容は「もし一緒にいれれば、キスしたり抱きしめたりしたかった」という内容だったという。教会スタッフはこの直後に退職している。ヒューストン牧師は当時、睡眠薬依存症に陥り治療を受けていたとされているが、ヒルソング教会はこうした行動を非難した。
ヒルソング教会では近年、他にも米国やオーストラリアで牧師たちによる複数の性的、金銭的不正疑惑が取り沙汰されてきた。
そのような中、ヒューストン牧師は、辞任から約半年ぶりとなる公の場での説教で、人生における挫折や失敗が、その人の遺産を決定するべきではないと伝えた。
「遺産は一生かけて築き上げるものですが、私たちはそれを傷つけることがあります。ほんの一瞬でへこませることもできます。しかし遺産について言えることは、それには必ず紆余曲折が伴うということです」
ヒルソング教会は18年、国際性の高まりを理由に、オーストラリア最大のペンテコステ派教団「オーストラリア・クリスチャン・チャーチズ」から離脱し、独自の教団になった。当時は、世界24カ国に123の拠点を持ち、週末には263の礼拝が行われていた。
ヒルソング教会のブランドとヒューストン牧師の遺産は、昨年11月のヒルソング・ニューヨーク教会のカール・レンツ主任牧師の解雇や、今年3月のヒューストン牧師の辞任など、多くのスキャンダルを乗り越えてきた。
ヒューストン牧師は、旧約聖書のダビデ王を指して失敗がその人の遺産を定義すべきではないと強調した。ダビデは戦いで負けたことはなかったが、「肉との戦い」に負けてバト・シェバと姦通(かんつう)し、「遺産を傷つけてしまった」とヒューストン牧師。「しかし、ダビデの遺産はそこで決まっていないと言わざるを得ません。神は彼を見捨てませんでした。彼は神に向かって、私の中に清い心をつくり、私の中の正しい霊を新たにしてくださいと叫んだのです」と伝えた。
「神よりも人々の方が圧倒的に厳しいのです。キャンセルカルチャーは、あなた方を見捨てるでしょう」
「彼らはあなた方を見捨てるかもしれませんが、神はあなたを見捨てることはありません」
ヒューストン牧師は、人生の挫折に負けて前に進めなくなることがないよう、会衆に呼びかけた。そして、年を取っても生きている限り、同じことをしていくつもりだと述べた。
「私は68歳ですが、私の中にはより多くのものがあると気付きました。まだ多くのものがあります。これが、私たちがすべき生き方なのです」
「遺産によって、私たちは批判者たちよりも長く生き続けることができ、中傷する人々よりも愛することができ、自分の間違いや失敗を越えて生きることができるのです。遺産の力を過小評価しないでください。ただし、すでに述べたように、遺産には常に幾らかの紆余曲折や予期せぬこと、そして挫折が伴うのです」