エジプトの首都カイロ近郊のギザ県インババにあるコプト正教会「殉教者アブ・セフェイン教会」で14日、火災が発生した。火災は日曜日の礼拝中に発生し、司祭1人と子ども10人以上を含む41人が死亡、警官4人を含む複数人が負傷した。
エジプト内務省によると、火災の原因は教会の2階にあった空調の電気系統の故障とみられている。同省は、同日午前9時ごろに報告を受けたという。インターネット上に投稿された映像からは、木製のテーブルや椅子などが燃える様子が確認できる。教会の外や負傷者が搬送された近くの病院では、消火活動が行われる中、家族が泣き続けていた。
AP通信(英語)によると、目撃者は「(煙による)窒息死です、窒息死です、全員死にました」と述べた。教会の隣に住むアフメド・レダ・バイオウミーさんはAFP通信(英語)に対し、「皆が子どもたちを建物の外に連れ出していました。しかし火が大きくなり、窒息してしまうため一度しか建物に入れない状態でした」と語った。また、別の目撃者は「火から逃れるために窓から身を投げ出す人もいました」と語った。
死亡した子どもの数は報道機関によって幅があるが、米CNN(英語)によると、少なくとも18人の子どもが死亡した。中には3歳の子どもも含まれている。
コプト正教会の広報担当者であるムーサ・イブラヒム長司祭によると、火災は偶発的なもので、死亡したのはアブデル・メシ・ベキト司祭。検察当局は「目に見える傷がない」ことから、煙による窒息が死因だとしている。
インババは労働者が多く住む人口密集地で、近くに住むミナ・マスリーさんはAFP通信に対し、救急隊や消防隊の到着が遅かったと指摘。救急車は「到着まで1時間以上」、消防車は「消防署から5分の距離なのに(到着まで)1時間近く」かかったとし、「救急車が時間通りに来ていれば、人々を救出できたかもしれません」と話した。
エジプトのアブデルファタハ・シシ大統領はフェイスブック(アラビア語)に、今回の火災の動向を注意深く見守っているとして、次のように書き込んだ。
「この火災とその影響に対処し、負傷者に医療を提供するために必要なあらゆる手段をただちに講じるよう、県のすべての機関に指示しました。彼らの主が礼拝されている家々(教会)から、主のみそばへと移った罪のない犠牲者たちのご遺族に、心から哀悼の意を表します」
AP通信によると、この日の夕方には、近隣の2つの教会に数百人が集まり埋葬前の祈りをささげ、犠牲者への追悼の意を表した。
コプト正教はキリスト教の一派で、エジプトでは最大のキリスト教コミュニティーを形成している。しかしそれでも、イスラム教徒が主体のエジプトでは、人口の約10%を占めるにすぎず、しばしば迫害の対象となっている。