韓国の最高裁は12日、キリスト教の異端とされる同国の新興宗教団体「新天地イエス教証しの幕屋聖殿」(新天地)の教祖である李萬熙(イ・マンヒ)総会長(91)に対し、新型コロナウイルスの防疫活動を妨害したとする感染病予防法違反の罪については無罪、横領罪と業務妨害罪については有罪とし、懲役3年、執行猶予5年を言い渡した。また、80時間の遵法教育履修も命じた。韓国クリスチャントゥデイ(韓国語)が同日、報じた。
韓国では新型コロナウイルスの感染が国内で広がり始めた2020年2月、初期の感染者の多くが新天地の信者だったことから批判が集中。新天地が防疫当局に対し、信者数や施設数などについて虚偽の報告をしたとして、李氏は感染病予防法違反などで起訴されていた。
韓国クリスチャントゥデイによると、防疫活動の妨害について2審は、「施設の現状について故意に過小報告したと断定することは難しく、たとえ新天地の資料提出が偽計公務執行妨害に該当しても、被告人が新天地の過小報告を指示したなどの証拠がないため、これを認めることはできない」とし、無罪とした1審判決を支持。最高裁も1、2審の判決を支持した。
韓国の通信社「聯合(れんごう)ニュース」(韓国語)によると、最高裁は、防疫当局が新天地に提出を要請した会員名簿や施設の現状報告は、感染病予防法が定める「疫学調査」には該当しないと判断。過小報告をした場合であっても、同法では処罰できないとした。一方、これらの要請は同法が定める「情報提供要請」には該当する可能性があるとした。しかし、情報提供要請に応じない人に対する処罰規定は20年9月に定められており、李氏にはさかのぼって適用できないとした。
一方、李氏は、新天地の研修施設「平和の宮殿」の建設で、50億ウォン(約5億1千万円)を横領した罪と、2015~19年に地方自治体の承認なしに公共施設である水原(スウォン)ワールドカップ競技場で宗教行事を行い、業務を妨害した罪でも起訴されていた。これらについては1、2審と共に有罪とし、最高裁もこれを支持。2審で言い渡されていた懲役3年、執行猶予5年が確定した。
2審は横領罪について、「被告人に提供された資金は、ほとんどが新天地の宗教目的の献金や後援金によるものとみられるが、被告人は新天地の規則などを掲げ、普段から新天地の財政が透明に管理されているかのように装いながらも、信者の信頼を裏切り、これを個人的な用途に使った」としていた。
また、業務妨害については、「被告人は使用許可が取り消されたにもかかわらず、水原ワールドカップ競技場で行事を無断で行うことにより、競技場管理業務を妨げ、競技場に侵入した」とし、「最終意思決定者として実務者に具体的な指示をしており、この点について犯行を主導的に実行・指揮したと見なければならない」としていた。