米連邦最高裁が、中絶権を認めた「ロー対ウェイド」判決(1973年)を覆す判決を下したことについて、米国福音同盟(NAE)は歓迎を表明した。NAEは今回の判決について、中絶に関する法体系において、この約半世紀で最も大きな変化を示すものであり、中絶政策に関する決定権を、市民と市民が選ぶ立法者に返還するものだと評価した。
NAEのウォルター・キム会長は発表(英語)で、「神は命の創造者であり、受胎から死に至るまで、すべての人命には計り知れない価値があります」とコメント。「『ロー対ウェイド』裁判の下では、最も脆弱な段階にある命を保護する政策について検討することが著しく制限されていました。今回の判決は、中絶政策に関するすべての問題を解消するものではありませんが、プロライフの懸念を考慮する上で障害を取り除くものです」と述べた。
NAEは今回の裁判で、アミカスブリーフ(英語)と呼ばれる第三者による法廷意見書を提出しており、その中で、米国憲法は、生存可能期間前やその他の妊娠段階における胎児の中絶を行う権利を認めてはいないと論じていた。
また、NAEは長年にわたって、胎児の保護と、弱い立場にある母親や子どもを支援する家庭志向の政策の両方を提唱し続けてきたとし、今回の判決は「女性と子どもを守る政策づくりに関わる新たな機会」だと歓迎。今後は、命の問題を取り巻く複雑な道徳をめぐり、実質的な対話に取り組んでいくとした。
また、中絶政策のような難しい問題に関して、公の場で有意義な説明をすることは、民主主義の繁栄にとって不可欠だと指摘。一方、今回の判決は、深い失望から歓喜に至るまで、強烈な反応を引き起こしたとし、他団体と共に、暴力や脅迫、破壊行為を回避する平和的な応答を呼びかけるとした。その上で、NAEは、すべての人の中に神の似姿を認め、自らの限界を告白するクリスチャンたちが、自分たちと意見の異なる人たちに対しても、敬意をもって注意深く耳を傾けるよう求めるとしている。
キム氏は、「聖書は、人が生まれる前から神がその人を召し出しておられ、その生涯にわたっていたわっておられることを明らかにしています(詩編139編)」と指摘。「弱い立場の女性や子どもたちを支え、すべての命を尊ぶために、私たちはできる限りのことをしなければなりません。神がこの国を導いてくださり、この国が命という尊い贈り物を尊重し、社会の繁栄の基盤である家庭を強化することに、より一層取り組むよう私たちは祈ります」と述べた。