太平洋戦争後も米軍統治下に置かれていた沖縄が日本に復帰してから50年を迎えた今年、日本キリスト教協議会(NCC)とカトリック正義と平和協議会はそれぞれ、沖縄戦の犠牲者を悼む沖縄の「慰霊の日」である23日に合わせ、声明と談話を発表した。
NCCは、1609年の薩摩藩による琉球侵攻以降、現在まで続く沖縄の「苦難の歴史」を回顧。その上で、日本政府は現在の日本国憲法下で少なくとも2つの大きな過ちをしたとして、1)昭和天皇が1947年、憲法上、政治行動が許されない中、米軍による沖縄・琉球列島の長期占領継続をダグラス・マッカーサー連合国軍最高司令官に要請していたこと、2)米軍爆撃機の発着地として沖縄をベトナム戦争に巻き込ませたこと――を挙げた。
特に2つ目の点については、「『日本本土』は、憲法9条において戦争放棄を謳(うた)いながら、この不条理の重荷を沖縄に負わせて、沖縄戦の悲しみにさらなる苦しみを塗り込んでしまった」と指摘。「このことは、日本政府が沖縄を『憲法9条の外』に位置づけたことを意味すると同時に、施政権返還後でさえ、日米安保条約と地位協定のもとで例外的な不条理を沖縄に肩代わりさせてきた日本の戦後『平和』の欺瞞(ぎまん)性と沖縄に対する差別性が鋭く問われている」とした。
また、ロシアによるウクライナ侵攻やそれに伴う日本国内の軍拡議論などに言及。現代は、相互不信と敵意、戦争の危機にさらされ、多くの犠牲者と難民を生み出す時代だとし、「沖縄の不条理な苦難の歴史に深く関わった『日本本土』のこれまでの歩みに目を向け、誠実に向き合い、神の前に深く悔いたいと思います」とした。
その上で、沖縄の人々の声に耳を傾け、沖縄と連帯する祈りと行動が求められていると強調。「ヌチドゥタカラ(『命こそ宝』)の沖縄に学び、世界中のすべての命が大切にされ重んじられるために取り組むことを表明します」「加盟する諸教会、諸組織と共に、これからも“沖縄”に向き合い自分を問い続けていく心を新たにしていくものであります」としている。
カトリック正義と平和協議会は、「今もなお(沖縄)本島の15%を米軍基地が占め、騒音や墜落事故の危険、米兵によるレイプを含む傷害事件などと隣り合わせの生活を強いられています」と沖縄の現状を指摘。この50年間、同協議会は沖縄に関して11の声明を出し、沖縄が被る不平等性を訴えてきたが、「問題は何一つ解決されていません」としている。
また、NCCと同様、中国の急速な軍事的台頭やロシアによるウクライナ侵攻に伴う日本国内の軍拡議論に言及。「日本が戦争に巻き込まれることになれば、まず標的となるのは沖縄をはじめとする全国の基地施設」とし、基地を有する地域が持たざるを得ない危険性を訴えている。
その上で、沖縄戦では民間人の4人に1人が犠牲になったとし、「21世紀となった今も、沖縄の命は本土のために見捨てられたままだと言わざるを得ません」と指摘。「辺野古の米軍基地、南西諸島の自衛隊基地の建設事業は軍拡競争を加熱させ、戦争に巻き込まれる危険をより高めるもの」だとし、日本政府に対し、軍事同盟に頼らず、いかなる国とも戦争をしない自立した外交を推し進めるよう求めている。