ナイジェリア・メソジスト教会のトップら指導者3人が5月29日、武装したグループに誘拐される事件があった。翌日には解放されたものの、治安の悪化が懸念されている。
英国メソジスト教会は30日、声明を出し、誘拐事件に対し「深い衝撃と懸念」を表明した。英BBCは同日深夜、3人が解放されたと報じた。
誘拐されたのは、ナイジェリア・メソジスト教会の最高位の地位「プレレト」(Prelate)にあるサミュエル・カヌ氏、同国南東部イモ州の州都オウェリの監督であるデニス・マーク氏、カヌ氏のチャプレンであるジェレマイア・シッツ氏の3人。3人は、同国南東部アビア州で行われた行事に出席した後に誘拐された。
英国メソジスト教会のソニア・ヒックス議長とバーバラ・イーストン副議長は共同声明で、「(ナイジェリアでは)誘拐、過激派による襲撃、武装集団による殺人が頻繁に起きており、多くの人が恐怖の中で生きています」と述べ、ナイジェリアのための祈りを要請した。
地元メディア「プレミアム・タイムズ」(英語)によると、3人は、重武装した黒装束の若者8人のグループに襲われ、誘拐された。誘拐犯らはカヌ氏らに対し、身代金目的の犯行であることを告げ、3人は1億ナイラ(約3100万円)の身代金が支払われた後に解放された。
事件を受け、キリスト教迫害監視団体「オープンドアーズ」は、ボコ・ハラムや過激化した遊牧民のフラニ族、「イスラム国西アフリカ州」(ISWAP)など、イスラム過激派によって、ナイジェリアでは数千人が誘拐の被害に遭っていることを伝えた。
オープンドアーズのアフリカ南部地域担当アナリストであるイリア・ドゥジャディ氏は、誘拐により誘拐犯は大金を手にすることができると話す。
「この事件は、ナイジェリアで頻発している一連の誘拐事件の中で最も新しいものです。治安の問題は、ナイジェリア国民にとって中心的な問題です。軍隊の将校から幼い子どもまで、あらゆる階層の人々が誘拐される可能性があります。来年2月の選挙(大統領選・総選挙)を前に、候補者たちは治安を最重要課題として挙げています。貧困が蔓延しているため、過激派は誘拐という、もうかる商売を最大限に利用し、身代金の支払いを要求することで安易にお金を手に入れているのです」
ナイジェリアは、オープンドアーズがキリスト教徒に対する迫害がひどい上位50カ国をまとめた「ワールド・ウォッチ・リスト」で7位にランクされている。