トルコの裁判所は25日、実業家で人権活動家のオスマン・カバラ氏(64)に対し、政権転覆を企てた罪などで終身刑を言い渡した。カバラ氏は、数多くの市民社会運動に関わり、1900年代初頭に起きたアルメニア人虐殺の認定や宗教的少数派の保護を求める活動なども行ってきた。トルコの前身であるオスマン帝国末期に起こったアルメニア人虐殺は、60~100万人以上が犠牲になったと考えられており、アルメニア人の多くがキリスト教徒であったことも背景にあるとされている。
国際的な人権団体はこれまで、カバラ氏の逮捕と拘束は政治的な動機によるものだとして非難してきており、今回の判決に対しても反発。米人権団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC、英語)のジェフ・キング会長は、「カバラ氏は、トルコの宗教的少数派の待遇改善のみを追求する人権活動により、数々の苦難に耐えてきました」とコメント。判決は「トルコの人権問題について認識を高めようとするすべての人に警告を送るものです」と批判した。
また、判決が言い渡された25日が、アルメニア人虐殺の追悼記念日翌日であったことにも触れ、「つい昨日、当局から追悼記念行事に対する複数の圧力を受けたばかりのアルメニア人虐殺の生存者たちに、特に悲惨な警告を送るものです」と述べた。
カバラ氏は2017年、「トルコの春」とも呼ばれ、レジェプ・タイイップ・エルドアン現政権を揺るがした13年の反政府デモを資金的に支援したとして逮捕された。反政府デモについては20年に無罪判決が出るが、再び逮捕され、16年のクーデター未遂への関与容疑も加えられるなどして、拘束が長期にわたって続いている。欧州人権裁判所(ECHR)は19年、カバラ氏の釈放を求める判決を出しているが、トルコの裁判所はこれを無視し続けている。
ICCによると、カバラ氏は、トルコの宗教的少数派を支援する財団を設立したことで、多くの人権団体から支持を得ている。また、アルメニア人虐殺をめぐる対話を継続的に提唱している。
国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」(英語)の欧州担当者であるニルス・ムイズニクス氏は、「今日、私たちは壮大な規模の司法の茶番を目撃しました。この判決は、オスマン・カバラ氏、共同被告人、その家族だけでなく、トルコ国内外における正義と人権活動を信じるすべての人に壊滅的な打撃を与えるものです」と述べ、判決を強く非難した。