ウクライナ東部ドネツク州クラマトルスクの鉄道駅に8日、ミサイル2発が打ち込まれ、子どもを含め避難民ら50人以上が死亡した攻撃で、避難民を支援していたクリスチャンの男性が死亡していたことが分かった。一部のキリスト教メディアは、男性が宣教師だったと伝えている。
現地のニュースサイト「クマ・シティー」(ウクライナ語)によると、死亡したのはローマン・セメントソフさん(40)。ウクライナの大手重機メーカー「ノボクラマトルスク機械製造工場」に勤務していたが、ロシアによる侵攻が始まり休職扱いになると直ちに、国内の慈善団体のボランティアとしてクラマトルスクの鉄道駅に行き、州外へ避難する人々の支援に当たったという。
一方、欧州のキリスト教メディア「エバンジェリカル・フォーカス」(英語)は、セメントソフさんが宣教師だったと伝えている。セメントソフさんはウクライナ人で、同国のペンテコステ派教団「チャーチ・オブ・ゴッド」に所属。ドイツの神学校卒業後、ボランティアとして奉仕活動に従事していたという。
セメントソフさんを派遣していた団体と協力関係にあるスペインのNGO「エルボンサマリタ」(「善きサマリア人」の意)のジャウマ・トラード会長は、「彼の人生は他者に対する奉仕だったと言っても過言ではありません」とコメント。セメントソフさんは教会で育った人物だったとして、その死を惜しんだ。
エルボンサマリタは、スペイン東部カタルーニャ州ブラネスで30年近く活動している福音派の団体で、貧困や社会的排除の撲滅を目指す取り組みを行っている。ウクライナでは他団体と協力して、4つの孤児院を立てていた。大きな被害が伝えられている同州マリウポリにも孤児院があり、今回の侵攻を受け、2~17歳の子どもたち31人をブラネスまで避難させた。避難には多くの困難が伴い、ウクライナ国外への越境も3回目でようやく成功。ブラネスに到着したのは、侵攻が始まってから1カ月以上がたった今月6日のことだったという。
セメントソフさんには、妻と複数の子どもがおり、クマシティーなどは、遺されたセメントソフさんの家族への支援を呼び掛けている。
クラマトルスクの鉄道駅には当時、避難しようとする高齢者や女性、子どもら4千人近くがいたとされている。ウクライナ政府はロシア側による攻撃だと非難しているが、ロシア政府は関与を否定している。