インド北部ウッタルプラデーシュ州で、洗足木曜日の礼拝を行っていた教会がヒンズー民族主義の暴徒に取り囲まれ、施錠をされ閉じ込められる事件があった。さらにその後、暴徒らの訴えに基づき、教会の信徒ら少なくとも36人が「強制改宗」容疑で警察に逮捕された。
米迫害監視団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC、英語)によると、同州ファテープル地区の教会で14日、約100人の信徒が聖木曜日の礼拝に参加していたところ、ヒンズー民族主義の暴徒が教会を取り囲み、施錠をして閉じ込めたという。さらに、ヒンズー教徒をキリスト教に強制的に改宗させたとして、暴徒のリーダーが訴えたことにより、警察は同州の「改宗禁止法」に基づき、教会の信徒ら少なくとも36人を逮捕した。
信徒の一人はICCに、「これは2千年前のイエスの苦しみを完全に再現するようなものです。私たちはイエスが耐えられたことを知っており、これからもそうするでしょう」と語った。
洗足木曜日は、キリスト教最大の祭典であるイースター(復活祭)直前の木曜日。イエス・キリストが最後の晩餐で、弟子たちの足を洗ったことを記念し、ミサや礼拝を行い、洗足式を行う教会も多い。
インド最大の通信社「PTI通信」(英語)によると、今回の逮捕は「(ファテープル)地区で過去40日間に(ヒンズー教徒)約90人を違法に改宗した容疑」によるもの。容疑をかけられたのは、女性10人を含む計55人で、15日までに26人が逮捕され、残り29人を捜索中という。少なくとも36人が逮捕されたというICCの情報は16日のもので、PTI通信の報道後、逮捕者がさらに増えたとみられる。
PTI通信によると、この「強制改宗」容疑を訴えたのは、ヒンズー民族主義団体「世界ヒンズー協会」(VHP)の役員。VHPは、キリスト教徒を含む少数派に敵対的なことで知られている。
ICCのジェフ・キング会長は、「悲しいことにウッタルプラデーシュ州は、信教の自由の侵害がインドで最も厳しい州の一つです」と言い、次のように語った。
「インド当局が暴徒の被害者を投獄することで、暴徒の行為を正当化することは、宗教的少数派をターゲットにした犯罪行為は、いつでも当局によって承認されるというメッセージを送ることになるのです。このような法的姿勢は、信教の自由に関する風潮を悪化させ、キリスト教徒がさらなる暴力にさらされる脆弱(ぜいじゃく)性を高めるだけです。改宗禁止法は本質的に主観的であり、人々の認識に基づくものであるため、キリスト教徒が信仰を公に表現する権利を完全に制限しています」
インドは、総人口に占めるキリスト教徒の割合がわずか2・3パーセントで、ヒンズー教徒が約80%を占めている。ヒンズー民族主義の台頭により、キリスト教徒に対する迫害が年々強まっているとされ、全28州のうち約3分の1の州で改宗禁止法が制定されている。
同法は、強制的または金銭的利益の提供による改宗を禁止するものだが、ICC(英語)によると、ヒンズー民族主義者らが、キリスト教徒に対する嫌がらせや暴行を正当化するために、虚偽の告発を行って同法を乱用する事例もあるという。