2月末に始まったロシアによる軍事侵攻により、ウクライナではこれまでに、国外に逃れた難民が400万人を超え、国内避難民と合わせると、1千万人以上が避難を余儀なくされている。こうした人々に対し、ウクライナ国内と隣国ポーランドで支援活動を行っている認定NPO法人「日本チェルノブイリ連帯基金」(JCF)が3月22日、現地とつなぐオンラインイベントを開催した。ウクライナでは、西部ウジホロド在住のカトリック神父を通じて支援を行っており、避難する人々を受け入れる現地の教会の様子も紹介された。
教会が避難する人々の受け皿に
ウジホロドは、ウクライナ西部ザカルパッチャ州の州都で、スロバキア、ハンガリー両国の国境と非常に近く、国外に逃れる人々の通過点になっている。ウジホロドにあるカトリック教会の司祭で、JCFが連絡を取り合っているボフダン・サブーラ神父によると、オンラインイベントが開催された3月22日までに、約70万人が押し寄せ、その多くが国外に逃れたが、州内には依然として20~25万人がとどまっている状態だという。
同州全域を管轄するムカチェボ東方典礼カトリック教区は、州人口の約40パーセントが所属しており、州内には教会を含め、教区関連の施設が約400存在する。これらの教会や教区関連施設が受け皿となり、国外避難の手続きや準備などのために数日滞在する人々に、宿泊場所や食事、物資を提供している。JCFの支援金は、こうした人々への支援に充てられているという。
オンラインイベントでは、教会に滞在し出国を準備する人々の写真のほか、国境を目指して延々と続く車列の動画などが紹介された。また、首都キーウ(キエフ)などから逃れてきた女性2人もサブーラ神父と共に参加。子ども2人連れでウジホロドまで来た女性は、夫が戦火の下にいるとし、国外避難は考えておらず、「戦争が早く終結して、子どもたちが早く学校に行けることを望んでいる」と話した。
230万人超のウクライナ難民が押し寄せるポーランド
ポーランドは、ウクライナからの難民を最も多く受け入れている国で、これまでに首都ワルシャワの人口を上回る230万人以上が入国したとされている。JCFは、ポーランド第2の都市クラクフ在住の日本人画家・宮永匡和さんを通して支援を行っている。宮永さんによると、さらに別の国へ向かう人もいるが、大多数はポーランド国内にとどまっており、物資や居住場所が多いことから、ワルシャワやクラクフなど、都市部にとどまることを希望する人が多いという。クラクフには11~13万人(3月22日時点)がおり、空きアパートや学生寮の空きスペースなどに仮住まいをしたり、体育館や競技場、ショッピングモールだった施設などが集団避難施設になったりしている。
難民は、住民登録をすると、初めに300ズウォティ(約9千円)が、その後は1日40ズウォティ(約1100円)が支給される。さらに子どもに対しては、ポーランド人と同様、毎月500ズウォティ(約1万5千円)が支給され、医療も無償で受けられるようになるという。政府は、難民受け入れのためのシステムや体制の構築を急ピッチで進めているが、200万人を超える規模であるため、なかなかスムーズには進んでいないという。また、8万人近いウクライナの子どもたちがポーランドの学校への通学を希望しており、宮永さんの娘が通う小学校でも100人弱が入学手続きをしているという。
宮永さんは、JCFの支援金で食料品や物資を購入。クラクフの集団避難施設にいる人々に届けたり、ポーランドの学校に通うウクライナの子どもたちために学用品を届けたりしているという。
避難者1千万人超でも難民キャンプができない驚き
JCFの鎌田實(みのる)理事長(諏訪中央病院名誉院長)は、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田明宏保健局長が、1千万人を超える難民・国内避難民が発生していながら、難民キャンプが一つもできていないことは、善意の多くの人々が支援に動いているからで、驚くべきことだと話していたことを紹介。JCFに対しても、東日本大震災で被災した福島県南相馬市の医師から、ウクライナ支援のための寄付が真っ先に寄せられてきたと話し、「ウクライナの母親や子どもたちに、目に見えるような支援をできればと思っている」と語った。
チョルノービリの原発事故後10年目の1996年に現地を訪問し取材した写真家の宮崎学さんは、当時撮影したウクライナ現地の写真と共に、素朴な生活をするウクライナの人々の様子を紹介。足指の一部を失った放し飼いのニワトリを撮影した写真では、放射能汚染の影響ではなく、厳しい冬の寒さによる凍傷のためだと教えられたと言い、寒さの中で避難する人々への思いを語った。
JCFでは、ウクライナ支援のための緊急募金を行っている。詳しくは、ホームページを。