正教会系の国際アドボカシー団体「正教会広報委員会」(OPAC)とウクライナ正教会の大主教が、ロシアのウクライナ侵攻に対する責任があるとして、ロシア正教会の指導者らに対し制裁措置を取るよう求めている。
OPACは、21日に発表した声明(英語)で、侵攻の責任は、ロシア国民とロシア正教会ではなく、それぞれの指導者にあると指摘。ロシア正教会では、モスクワ総主教キリル、その有力後継者とされるプスコフ・ポルホフ府主教ティーホン、モスクワ総主教庁対外教会関係局局長のボロコラムスク府主教イラリオン、同副局長のニコライ・バラショフ長司祭の4人の名前を挙げ、「ウクライナ侵攻を支持するだけでなく、自国民に対する政府のうそを永続させている共犯者」と述べ、強く非難した。
声明はまた、これら4人について「自らの群れの3分の1を占めるウクライナの正教徒を見捨て、クレムリン(ロシア大統領府)の命令で動く兵士たちと同様に、罪のない子どもや民間人の死に対して非難されるべき存在」だと指摘。「われわれは、羊の皮をかぶった狼(おおかみ)のように振る舞うロシアの教会の『羊飼い』たちから出てくるうそを傍観して聞くことはできない」と述べている。
その上で、ロシアの政府高官や新興財閥(オリガルヒ)と同様、ロシア正教会の指導者らに対しても制裁を科すよう要求。「正教信仰に対する裏切りや、この不当で血生臭い戦争に対する共犯に責任を負わなければならない」と訴えている。
2020年11月に発足したOPACは、米共和党の大統領候補者の選挙活動に長年携わり、ドナルド・トランプ前米政権下では大統領副補佐官やアドバンス(遊説準備)担当ディレクターを務めたギリシャ系米国人のジョージ・ギギコス氏が会長を務める団体。ウェブサイト(英語)では、「世界中の正教会のために公的アドボカシーを提供し、迫害や排除、偏見に直面する世界中のキリスト教共同体を促進し、支援し、守り、擁護する」ことを活動目的としている。
また、独立系の正教会ニュースサイト「オーソドックス・タイムズ」(英語)によると、ウクライナ正教会(非モスクワ総主教庁系)のチェルニヒウ・ニジン大主教イェブストラティも、ロシア正教会の指導者らに対する制裁を求めている。
ウクライナ正教会の広報官を務めるイェブストラティ大主教は、OPACと同様、キリル総主教、イラリオン府主教、ティーホン府司教、バラショフ長司祭の4人に対する制裁を要求。これら4人は、すでに制裁が科されているロシアの政府高官やオリガルヒと「同罪」だとし、「ウクライナに対する戦争を計画、実行、促進しているクレムリンの活動的なメンバーとして、国際的な制裁リスト、またウクライナの制裁リストに含まれなければならない」と述べている。
イェブストラティ大主教はさらに、ロシア正教会の4人の指導者について、「ロシアのウクライナ侵攻の思想的背景をつくり出した新帝国主義的な思想である『ルースキーミール(ロシアの世界)』の主要な支持者」だと指摘。「この全員は、その地位と、ロシアでつくられた国家・教会間のシステムにより、間違いなくロシアの特務機関や政府高官、大統領府と常に連絡を取り続けている」と主張した。