ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)の首座主教であるキエフ府主教オヌフリイは24日、ウクライナ国内の信者に向けたメッセージ(ウクライナ語)を発表した。この日始まったロシアによる軍事侵攻は「悲劇」だとし、「ウクライナ正教会は、これまでもこれからも国民と共にある」と述べ、「慌てる必要はない。神が共におられる。われわれは今日、勇気を示さなければならない」と呼び掛けた。
オヌフリイ府主教は「祈り、神への愛、祖国への愛、そして互いへの愛において団結しなければならない」と強調。「神が共におられる、絶望してはならない」と訴え、ウクライナ兵に神の加護があるよう願い、「われわれの国土と国民を守る兵士らに特別な愛と支援を表明する」とした。
一方で、慎重であることも強く求めた。神は人間を知的な存在として、また言葉の賜物を持つ存在として創造されたとし、「われわれは、この地でわれわれの間に生じるすべての問題を、この精神と言葉で解決しなければならない」と強調。「戦争をやめ、交渉の席に着き、今われわれを分断している問題を、理性と言葉の助けを借りて、文明的で神聖な方法で解決するよう、すべての人に呼び掛ける」とした。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対しては停戦を要求。ロシア民族はもともと、キエフのドニエプル川周辺に起源を持つ民族であるとし、「われわれが互いに戦争をしていることは最大の恥」だと指摘。創世記に人類最初の殺人として記されている兄カインによる弟アベルの殺害を引き合いに出し、両国間の戦争は「カインの殺人」だと述べた。
世界教会協議会(WCC)は25日、公式サイト(英語)で、オヌフリイ府主教のメッセージへの支持を表明。WCCのイオアン・サウカ暫定総幹事は、「WCCはプーチン大統領に対し、この兄弟戦争をやめ、ウクライナの国民と国家に平和を取り戻すよう、同じ訴えをする」と述べた。
ウクライナには、キエフ総主教庁系のウクライナ正教会とウクライナ独立正教会が統合して2018年に発足したウクライナ正教会と、ロシア正教のモスクワ総主教庁と関係を維持するモスクワ総主教庁系のウクライナ正教会が存在する。今回メッセージを発表したオヌフリイ府主教は、モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会のトップ。