老舗の聖書サイト「バイブル・ゲートウェイ」から、英語訳聖書の「パッション訳聖書」(The Passion Translation=TPT)が削除された。
TPTは、パッション・アンド・ファイヤー・ミニストリーズの指導者であるブライアン・シモンズ氏が翻訳した聖書で、米キリスト教出版社「ブロードストリート出版グループ」から出版されている。
同社は米クリスチャニティー・トゥデイ誌(英語)に、バイブル・ゲートウェイが今年1月にTPTとのライセンスを打ち切ったことを明かした。同社は「説明はありませんでしたが、ブロードストリート出版グループは、バイブル・ゲートウェイが自分たちで管理するプラットフォームについて、適切と考える決定を下す権利があることを受け入れています」としている。
バイブル・ゲートウェイはインターネット黎明期の1993年、カルビン大学(米ミシガン州)で学生向けの聖書研究用ツールとして始まった。現在は、出版大手ハーパーコリンズ傘下のビブリカが運営しており、約70言語200訳以上の聖書をオンラインで利用できる。
TPTは2017年に発売され、ブロードストリート出版グループは「神の心の情熱を解き放ち、神の燃えるような愛、感動と人生を変える真理を融合して表現する現代的で読みやすい聖書翻訳」とうたっている。
TPTはカリスマ派に人気があり、ベテル教会(米カリフォルニア州)の指導者であるビル・ジョンソン牧師もファンの一人。TPTの公式サイト(英語)に寄せたビデオメッセージでジョンソン牧師は、TPTを読むことを「ここ数年の私の人生における偉大な新しい経験の一つ」と表現している。
しかしTPTをめぐっては、翻訳よりもパラフレーズ(語句の意味を分かりやすく別の言葉で言い換えること)だとして批判する声もある。キング・チャーチ・ロンドンのアンドリュー・ウィルソン牧師はクリスチャニティー・トゥデイ誌に、「原文に基づかない加筆が多過ぎる。これは、意識的に言い換えたのなら(ある意味)良いが、(聖書原典の)翻訳だと思われると困る」と話している。