英国ロンドンの名物、二階建ての赤いバスに6日から、「神は多分いない」などと記された無神論を主張する広告が掲載された。これに対して、英国のキリスト教系シンクタンク「セオス(Theos)」は、広告がかえって人々に神の存在について考えさせるようになると楽観的な立場を示した。
広告は無神論を主張する英国ヒューマニスト協会(BHA)が出稿したもので、ロンドン市内のバス800台に6日から、「神は多分いない。心配するのはやめて、人生を楽しもう」という広告が掲載された。
これらの広告は、すでにロンドン市内のバスやあちらこちらの看板に掲げられているキリスト教の広告キャンペーンに対抗するものだという。英国では、アルファ・コースなどの宣教団体が「もし神が存在したなら、あなたは何をお願いするか?」などという広告を掲載している。
この広告キャンペーンは、熱烈な無神論者、反宗教主義者として知られる動物行動学者のリチャード・ドーキンズ氏も支持し、一部資金的な援助もしたという。ドーキンズ氏は英BBCに対して、この広告キャンペーンは、同氏が「宗教に対する憎悪」と呼ぶ運動に人々の関心を向けるものだと語るが、教会側はむしろ、人々がこのキャンペーンによって神の存在を考えるようになると歓迎しているようだ。
セオスのディレクターであるポール・ウーリー氏は「我々は、このキャンペーンが、人々が神について考えるための大きな一つの道筋になると思っている。これらのポスターは、我々の人生の中で最も重要な問題は何かということを考えさせてくれる」と語る。
「このスローガン自体が、大きな議論をもたらす起爆剤だ。『神は多分いない』と言うのはまるで、玄関の鍵を多分閉めたと記憶していると言うようなものだ。これは、鍵を閉めていないのではないかという疑念を生み出す」とウーリー氏は指摘する。ウーリー氏によれば、セオスによる新しい研究成果が来月にも発表される。その内容は、今日の英国では信仰を捨ててしまった人も多くいるが、依然として多くの人々が神を信じているというものだという。
一方で、英国のマーケティング協会会員で、国際的な広告マーケティング企業であるオグルヴィ・アンド・メイザー社の前最高経営責任者であるマイク・エルムズ氏は、今回の広告がキリスト教の復興における一つの役割を担うということもありえるとする見解を示した。
エルムズ氏は、「これまでの長い間、英国民は『C of E』(=Church of England、英国国教会)と書くことで、(神が)存在するか、しないかという『神の選択』を避け続けてきた」と指摘。「しかし今、無神論者たちは我々に一方の道を行くか、または他の道を行くかを選ぶよう、挑戦してきているのである。無神論者によるキャンペーンは、神の性質、存在についての非常に国民的な議論をもたらすだろう」と語った。