ブラジル上院は1日、ジャイル・ボルソナロ大統領が連邦最高裁判事に指名していたアンドレ・メンドンサ氏(48)の人事案を賛成47、反対32で承認した。メンドンサ氏は、ボルソナロ政権下で法務・公安相、連邦総弁護庁長官を歴任。弁護士であり、長老派の牧師でもある。
福音派メディア「エバンジェリカル・フォーカス」(英語)によると、ボルソナロ氏の支持層にはブラジル国内のプロテスタントが多く、牧師であるメンドンサ氏の指名は野党の間で批判の声が上がっていたという。
ボルソナロ氏は7月、連邦最高裁判事を退任したマルコ・アウレリオ・メロ氏の後任としてメンドンサ氏を指名。しかし、上院の憲政委員会は通常1カ月で済む手続きを4カ月かけ、1日に上院で行われたメンドンサ氏に対する試問は史上最長の8時間にわたった。
メンドンサ氏は試問で、「人生では聖書を、最高裁では憲法を」と述べ、自身の信仰と公務の間には明確な線引きをすることを表明。ボルソナロ氏は指名時、メンドンサ氏が判事となれば、最高裁の審議を「神への祈りと感謝」をもって始めるだろうと述べていたが、メンドンサ氏は試問でこれを否定し、「最高裁には宗教的な表現のための場はないことを大統領に伝えた」と述べた。
また、政教分離原則や特定の信条に特権を与えないことを約束し、「信仰を持たない人も含めて、すべての市民の信教の完全な自由を保証する」と強調。個人の人生においては聖書が最高の拠り所になるだろうとしつつも、「憲法は判事の判断の唯一の拠り所であり、またそうあるべきだ」と述べ、個人的な信条と衝突する可能性のある事柄も含め、職務を遂行する際には法令に従うことを明言した。
ブラジルの連邦最高裁判事の定員は11人で、メンドンサ氏の判事就任が承認されたことで、10人となった。