西アフリカのガーナで、同性愛行為に対する罰則を厳罰化し、LGBT(性的少数者)を擁護する行為も違法とする法案が審議されていることを受け、英国国教会(聖公会)のカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーが「重大な懸念」を表明した。法案への支持を表明しているガーナの聖公会に対しても、働き掛けを行うとしている。
ガーナではすでに、同性愛行為は禁錮3年の罰則が定められた違法行為とされている。議会で審議されている法案は、罰則を禁錮最大10年に延長し、さらにLGBTの権利を求める運動を行ったり、LGBTへの支持を表明したりする行為も違法とする内容。
英ガーディアン紙(英語)によると、西アフリカ聖公会ガーナ内部管区のシリル・コビナ・ベン・スミス大主教が署名した声明は、ガーナの聖公会が法案を支持するのは、同性愛行為が「聖書に反し、神に反している」からだと主張。「私たちは、LGBTを神の目から見て不義であると考えており、そのため、法案が可決されるよう、われわれの能力と権限の範囲内であらゆることを行います。レビ記20章13節では、女と寝るように男と寝る者は、両者共にいとうべきことをしたのであり、必ず死刑に処せられると明確に宣言されています」としている。
その一方で、「教会は同性愛傾向のある人々を非難するのではなく、彼らが行う罪深い行為や活動を絶対に非難するのである」と付け加えている。
ウェルビー大主教は10月26日に発表した声明(英語)で、法案に対し「重大な懸念を抱いている」とし、ベン・スミス大主教と近日中に話し合う予定だと表明。その上で次のように述べている。
「アングリカン・コミュニオン(全世界聖公会)に所属する大多数の聖公会は、1998年のランベス会議における決議第1号10で示された結婚に関する伝統的な教えと、性的指向にかかわらず、すべての人が法の下で権利を有することの両方を支持することを約束しています」
「決議第1号10で、聖公会は『(LGBTQ+の人々が)神に愛されていることを保証し、性的指向にかかわらず、洗礼を受けた信仰心のあるすべての人が、キリストの体の完全なメンバーであることを保証する』という約束もしています」
「一方、アングリカン・コミュニオンの主教らは、同性への性的指向を有する人々の犯罪化に反対を表明してきました。最近では、2016年の首座主教会議の共同声明(コミュニケ)で満場一致で表明しています」
「ガーナの聖公会の兄弟姉妹は、これらの約束を思い出してほしい」
「私たちはグローバルな教会の家族ですが、教会の使命はどの文化や国でも同じです。それは、イエス・キリストを通してすべての人に無条件の愛を提供するという神の申し出を、その行動や言葉を通して示すことです」
ガーナは人口の7割がキリスト教徒。所属教派は、カトリックや聖公会から、ペンテコステ派を含むペンテコステ諸派までさまざまだとされている。1957年に独立するまで英国の植民地で、現在も英国連邦に加盟している。アングリカン・コミュニオンの一管区である西アフリカ聖公会は、ガーナを含め西アフリカの8カ国を管轄。ガーナ内部管区と西アフリカ内部管区に別れ、全17教区のうち11教区がガーナに集中している。