東方正教会のコンスタンティノープル全地総主教バルソロメオス1世は10月25日、米首都ワシントンを訪問し、ジョー・バイデン米大統領や米政府高官らと会談した。バイデン氏と環境問題や信教の自由の問題について話し合った総主教は訪問期間中、宗教指導者や政治家らにも気候変動との闘いを呼び掛けた。
総主教は米国到着後、体調を崩して一時入院したものの、25日にはホワイトハウス訪問を含む多忙なスケジュールを再開。ホワイトハウスは発表(英語)で、「大統領は総主教バルソロメオス1世の迅速な回復に安堵(あんど)の意を表しました。両者は、気候変動に立ち向かうための努力、世界的な新型コロナウイルスのパンデミックを終わらせるための措置、基本的人権としての信教の自由の重要性などについて話し合いました」と伝えた。
米宗教専門のRNS通信(英語)によると、総主教は今回の会談に「十分な満足」を示し、ローマ教皇フランシスコやカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビー、またイスラム教やユダヤ教の宗教指導者らと協力し、全世界に新型コロナウイルスのワクチン接種を促していくさらなる計画をバイデン氏に明らかにしたという。
総主教は「われわれは全世界の人々、特に貧しい人々や、最も貧しい人々を抱える裕福な国へのワクチン接種を促進し、誰もが安全を手に入れられるよう訴えていく」と述べ、バイデン氏は「われわれ共通のイニシアチブを満足して受け入れた」と付け加えた。
バルソロメオス1世は精力的に環境保護を訴えていることから「緑の総主教」と呼ばれることもある。この日は、アントニー・ブリンケン米国務長官とも会談。世界約2億人の正教徒の精神的指導者である総主教は、「気候危機に対応する早急な政治的行動」の必要性を再び提起するとともに、中東で迫害されているキリスト教徒の窮状についても懸念を表明した。
ワシントン近郊のジョージタウン大学では、カトリック教会のワシントン大司教ウィルトン・グレゴリー枢機卿と面会。グレゴリー枢機卿が全地総主教選出30周年を迎えたことに対する教皇の祝意を伝えると、総主教は教皇との「兄弟のような友情」に言及し、2人には「環境保護のために働く」という共通の関心事があることを指摘した。
総主教はこの日の夕食会でも、気候変動問題に焦点を当て、環境への配慮は宗教的な義務だと主張。「長年にわたって、創造主、被造物と、その仲介管理者であり被造物の司祭である人間とのつながりを正しく把握できていない人がいた」と述べ、環境保護活動は「刹那的な運動」ではなく、「神から委ねられたすべてのものの忠実で賢明な管理者」となるように命じている福音書によって、キリスト教徒に義務付けられているものだと語った。
また、自身の環境保護活動を単なる気候変動への対応ではなく、「教会活動の核となるアイデンティティーと倫理性の極めて重要な表現である」と強調した。