ハイチの孤児院を訪問していた米国人宣教師ら17人が誘拐された事件で、誘拐した現地のギャングは、宣教師らの解放に一人当たり100万ドル(約1億1千万円)、計1700万ドル(約19億円)を要求している。同国のリスト・キテル司法相が19日に発表した。
キテル氏は米ニューヨーク・タイムズ紙(英語)の電話インタビューに応じ、誘拐犯のギャングが「クリスチャン・エイド・ミニストリーズ(CAM)のハイチ担当者に、一人当たり100万ドルを要求してきた」と述べた。一方、キテル氏は「多くの場合、ギャングはこうした要求は応じられないことを知っており、家族からの提案を検討することになります」と説明した。
CEMは米オハイオ州に拠点を置くキリスト教の宣教団体で、CAMの発表(英語)によると、誘拐された17人は、男性6人、女性6人、子ども5人で、うち16人が米国人、1人がカナダ人。年齢は大人が18歳から48歳までで、子どもは生後8カ月、3歳、6歳、13歳、15歳。
17人はCAMのスタッフとその家族で、宗教団体を標的にするハイチのギャング「400マオゾ」に16日に誘拐された。
「マオゾ」は「未熟な男たち」という意味で、白昼堂々と行う殺人や身代金目当ての誘拐、ビジネスマンへの恐喝などで知られている。
ハート・ダンカード・ブレザレン教会(ミシガン州)のロン・マークス牧師は18日、誘拐された宣教師の中に同教会のメンバー数人(子ども4人を含む5人家族)が含まれていると、米デトロイト・ニュース紙(英語)に語った。
マークス氏は被害者の名前を公表しなかったが、最年少の子どもは10歳以下だと説明。「私たちの思いは神ご自身とその摂理に向いています。神は私たちをこのような状況から救ってくださいます」と述べた。
一方、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は18日の記者会見(英語)で、安全上の理由から身元を明らかにすることはできないとするしながらも、17人を安全に帰国させるため、米国の国務省と連邦捜査局(FBI)が協力していると述べた。
「大統領はこの人たちを安全に帰国させるために国務省とFBIが行っていることについて説明を受けており、定期的な情報の更新も受けています」
「FBIが関与しているのは米政府が着手した取り組みの一環で、当該米国民らを無事に帰すことが目的です。任務上の配慮から本件について詳細を述べることはできませんが、彼らの関与は確認できています。また、ハイチの首都ポルトープランスの米国大使館が現地当局と協力し、事件の解決に向けて家族を支援しています」
CAMは18日、宣教師の安全な帰還のために祈るようキリスト教界に呼び掛けるとともに、メディアや世界中の支援者の助けと祈りに感謝を示した。また、誘拐犯のためにも祈るよう求めた。
「ハイチで17人の宣教師がギャングに誘拐されて3日目を迎えました。メディアはこの状況を世界に伝えています。ハイチと米国の文官当局は事態を把握し、支援を提供しています。私たちはこの状況を注意深く見守り、真剣に祈っています」
「私たちは世界中の信仰者の祈りに大いに感謝しています。多くのアーミッシュやメノナイトの支援者もその一部です。聖書には、『正しい人の祈りは、大きな力があり、効果をもたらします』(ヤコブ5:16)とあります。神の恵みが人質となっている男性、女性、子どもたちを支えてくれるよう共にお祈りください」
特にCAMは、人質になっている人たちが「神の愛を示す力を得られますように」と祈り求めている。
「誘拐犯もすべての人と同様、神の似姿に造られており、神に立ち返れば変えられるのです。私たちはスタッフの安全な解放を願うとともに、平安と喜びと赦(ゆる)しの唯一の源であるイエスの愛によって、誘拐犯が変えられることを願っています」