トルコ東部にある大きな船のような地形について、研究者らが聖書に記されている大洪水後、ノアの箱舟が漂着した場所の可能性があると主張していることについて、米ケンタッキー州の創造論団体「アンサーズ・イン・ジェネシス」は懐疑的な立場を示している。
「ノアの箱舟スキャン」(英語)と呼ばれるプロジェクトに関わる考古学者らは9月、トルコ東部のテンデュレック山近くにあるこの船の形をした地形を地中貫通レーダーで3Dスキャンしたところ、異常な形が確認されたことを報告し、旧約聖書に記載されているノアの箱舟の「正確な長さ」と一致するとしていた。
トルコの研究者とその他の支援者からなるチームは今後、「この地形において、これまでで最も完全な地球物理学的調査と科学的研究」を行うことを計画している。
一方、アンサーズ・イン・ジェネシスのケン・ハム会長は7日、団体のホームページに掲載した文章(英語)で、テンデュレク山近くにあるドゥルピナール遺跡と呼ばれるこの地形は、1959年の発見以来、長年にわたってノアの箱舟が漂着した場所ではないかと推測されてきたと説明。アンサーズ・イン・ジェネシスの研究部門の責任者である地質学者アンドリュー・スネリング氏の発言を紹介している。スネリング氏は、箱舟がそのままの形で今日まで残っているとは考えない立場を採る。
「ノアとその家族が箱舟から降りた後、住居を造るのに必要な成熟した木がなかったことから、彼らは(必要なくなった)箱舟を解体して木材を回収したと考えるのが妥当です」とスネリング氏は言う。
「その上、この(「ノアの箱舟スキャン」の研究者らの)主張によれば、箱舟の場所は、創世記の記述にあるような山の上ではなく、谷の中にあることになります。『アララト山』(創世記8:4、「山」が複数形であることに注意)の正体と位置は正確には不明ですが、この場所でさえ(泥流の下の)火山性溶岩流の上に位置しており、(トルコ東端の)アララト山と同様に、(テンデュレク山は)最近まで噴火していた大洪水後の火山なのです。箱舟が山に漂着したのは大洪水が発生してから150日目です。ですから、噴火している火山、あるいは大洪水後に再び噴火する火山に漂着したとしたら、ノアとその積荷は危険にさらされます」
スネリング氏は、研究者らが使用した「地球物理学的イメージング」も、最終的には「解釈者のバイアスに基づく解釈の対象となる」と指摘。「現実には、これらの『調査員』は、実際に遺跡を掘り下げて発掘するまで、この『船型の地形』の中に何があるのかを確定することはできないでしょう」と述べている。
「地球物理学的イメージングで現れた珍しい平行線や角のある特徴について、彼らは好きなだけ理論を語ることができますが、実際に現場を掘ってそれらの特徴を目で見て確認するまでは、彼らの理論は単なる理論でしかありません」
スネリング氏はまた、信仰者がノアの箱舟を「歴史的事実として受け入れる」ために、箱舟それ自体が発見される必要はないと断言する。
「私たちにはすでに、常に存在し、すべてを知っておられる創造主の言葉による間違いのない証言があります。たとえ箱舟が発見されたとしても、嘲笑者たちはその証拠を否定し、自分たちが信じている神話のために崇拝者たちが作ったレプリカであると見なすでしょう」
「ノアの箱舟スキャン」の研究者らは、2014年と19年に実施された民間の地球物理学的調査により、「地面の下にある層と興味深い角状の構造」が示されたとし、「新しい地中レーダー調査(GPR)のデータでは、8~20フィート(約2・4~6メートル)下に平行線や角張った構造物が見られます」と説明している。
「地面の下のこれらの平行線と角は、自然の地層では見られないものです。興味深いことに、この船の形は、聖書(創世記6:15)に記されている箱舟の正確な長さであることも確認されています」
プロジェクトの責任者であるアンドリュー・ジョーンズ氏は、英サン紙(米国版、英語)に対し、GPRのデータは「この場所が単なる固い岩の塊であったり、泥流によるランダムな破片の集積であったりした場合に期待されるものではありません」と言い、「しかしこれらの結果は、これが聖書のノアの箱舟の条件に合致した人工の船であれば、期待できるものです」と語っている。
プロジェクトには、ジョーンズ氏の他に、ノアの箱舟の研究を専門とする非営利団体「ダウティングトーマス研究財団」のライアン・マウロ会長や、イスタンブール大学のフェティ・ユクセル助教授らが参加している。チームのメンバーは、8月に4日間かけて調査を行った。ジョーンズ氏はこれまで、地球物理学的調査やコアボーリング調査、地質学的調査が完了するまで発掘は行わないと述べている。
ジョーンズ氏によると、ユクセル氏はこの地域での作業許可を取得しており、これにより今後の作業が加速すると話している。