エジプトのコプト正教会の教皇であるシェヌーダ3世アレクサンドリア総主教がこのほど、信徒が司祭に罪を告白する「痛悔(つうかい)」(カトリックの「告解」に相当)を電話で行うことを禁止した。「国の情報機関が盗聴しているかもしれない」というのが理由で、インターネット上での痛悔についても秘密にならないとして、痛悔とはみなされないとした。AFP通信が、エジプト紙「アルマスリ・アルヨウム」の情報として伝えた。
痛悔は正教会における機密(カトリックの「秘跡」に相当)の一つで、まれに集団で行われることもあるというが、個人的に行うことが基本。罪を告白した信徒に対して司祭は生活の改善のための助言を与え、罪を解く祈祷文を唱える。カトリックでは「告解室」と呼ばれる密室で行われるが、正教会では多くの場合聖堂で行われる。通常は痛悔の内容が他人に聞かれないよう、痛悔中は他の信徒が大きな声で聖書を朗読するなどする。
カトリックでも告解を電話やインターネットで行うことは認められておらず、コプト正教会のアンバ・モルコス総主教によれば、電話での痛悔はここ4、5年前から出てきた新しい問題だという。
コプト正教会は、紀元2世紀にエジプトで独自に発展し、カルケドン公会議を承認しないことで分離した非カルケドン派の教会。同じく非カルケドン派であるシリア正教会、アルメニア正教会、エチオピア正教会とは、基本的な教義が同じで互いに正餐を認め合う「フル・コミュニオン」の関係にある。
コプト正教会の信者は主にエジプトに集中し、エジプトの人口の5〜10%がコプト正教会の信者であると言われている。一方、海外への移民によって欧州や米国などエジプト国外にも広がりを見せている。