レバノンの首都ベイルートで昨年8月4日に大規模な爆発が発生してから1年が経過した。同国で40年以上支援活動を行っているキリスト教国際NGO「ワールド・ビジョン」は、経済危機の深刻化により貧困層が大幅に増加し、子どもたちが深刻な人道危機にさらされていると警告している。
爆発は、ベイルートの港湾地区の倉庫に保管されていた約2750トンの硝酸アンモニウムに引火したことが原因とされている。爆薬の原料となる化学物質で、危険性が再三指摘されながらも放置されてきた。爆発による振動はマグニチュード(M)3・3の地震に相当するほどで、約200人が死亡、約6千人が負傷、約30万人が住居を失った。
ワールド・ビジョンは現地の地域コミュニティーと協力し、家屋600棟以上、学校10校を修繕。子どもや保護者ら約4700人に心理・社会的支援を提供した。また、レバノンでは従来から生計向上に焦点を当てた長期的な支援プログラムを実施しており、この活動を通じてこれまでに、レバノン人とシリア難民89万人以上(うち約49万人は子ども)を支援している。
レバノンの状況についてワールド・ビジョンは、深刻な経済危機が「家計の貯蓄を崩壊させ、食料・燃料・医療・電力などの不足を引き起こし、何百万人もの人々を苦しめている」とし、「爆発による緊急事態よりはるかに巨大」だとする。そのため、人口約680万人の約15%に当たる100万人の子どもたちが困窮状態にあると訴える。
国連の推計によると、支援を必要とするレバノン人約150万人と、レバノンで働く移民労働者約40万人に支援を届けるためには、約3億ドル(約330億円)が必要だとされる。しかし、レバノンは人口の約半数が貧困状態にあると考えられており、さらに100万人以上のシリア難民と27万人以上のパレスチナ難民を抱えている。
そのため、ワールド・ビジョン・レバノンのハンス・ベダースキー事務局長は次のように訴えている。
「レバノンが直面している人道危機は、極めて憂慮すべきもので、悪化の一途をたどっています。家族は、仕事やビジネスといった生計手段を失いつつあります。ハイパーインフレによって貯蓄も価値を失い、緊迫した雰囲気が街中を覆う中で宗派の対立が拡大する恐れもあります」