6月英国のコーンウォールで、約2年ぶりの対面開催となった主要7カ国首脳会議(G7サミット)だが、首脳宣言においては、ウイグル人ジェノサイドや台湾海峡の平和と安定にも言及され、膨張する中国共産党(CCP)についての懸念が表明された。
ところが当のCCPはといえば、G7声明などどこ吹く風だ。香港警察は6月27日、CCPに批判的な論調によって廃刊に追い込まれた「リンゴ日報」の元主筆の一人で英語版の執行編集長も務めていた馮偉光(フン・ワイコン)氏を、英国へ脱出する飛行機に搭乗しようとしていた直前、空港で逮捕した。「リンゴ日報」をめぐっては、すでに創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏のほか、編集幹部ら6人が国家安全維持法(国安法)違反容疑で逮捕されていた。香港言論の良心は、ついに無残に摘み取られてしまったのだ。
この事件に先立つ6月初旬、香港カトリック教会が毎年6月4日に実施している天安門事件犠牲者追悼ミサの開催をめぐって脅迫の手が伸ばされていた。追悼ミサがささげられる前日夜、香港の7つのカトリック教会には、ミサ開催に対する脅迫ポスターが貼られていた。このポスターには、元香港司教の陳日君(ジョセフ・ゼン)枢機卿の写真と「このような追悼活動は国安法に違反する」という警告があった。
また、地元当局は、毎年開催される同日夜のキャンドルナイトを禁止し、開催場所となるビクトリア公園への立ち入りを禁止した。しかし4日のキャンドルナイトの夜には、周辺の公園や通りに数千人が集まり、多くの人が携帯電話のライトなどを掲げて団結を表した。
香港警察は、この集会を主催してきた「香港市民支援愛国民主運動連合会」(支連会)の鄒幸彤(トニー・チョウ)副主席を事前に逮捕し、集会を中止させようとしたが、香港民衆の自由への渇望はそれに屈しなかったのだ。
一方、香港教区の「正義と平和委員会」は、感染対策上ミサの参加者を30パーセントに制限しなければならなかったが、脅迫に負けず、天安門犠牲者追悼ミサを執り行った。これは、香港の中国支配をより強固にするために作られた世紀の悪法「国安法」の施行後、最初の天安門記念ミサとなった。
以前のようにビクトリア公園に集まることができないため、現在の状況では、教会はそのようなイベントを行うための唯一の合法的なスペースになる。7つの教会が2500人を収容できるように設定されているのは、香港政府のガイドラインにのっとった合法的なものだ。
英シンクタンクの最新の報告では、従来予測の2032年から5年の前倒しとなる2028年、中国は、GDPで米国を抜き、世界最大の経済大国となる見通しだ。米ソ時代にはレーガン政権の画策が見事に功を奏し、米国との軍拡競争に付き合わされたソ連は、経済破綻を引き起こして解体に至った。
しかし今対峙しているCCPは、ソ連と同じ轍は決して踏まないだろう。むしろ今の予測では、一党独裁国家が世界経済の覇者になろうとしている未曾有のシナリオに直面しているのだ。
今後の世界情勢を占う上で、香港や台湾など中国周辺地域の自由と民主主義が守られることは極めて重要だ。特に香港では、民主化運動の人々をつなぐハブ的な存在として、カトリック教会やプロテスタント教会がその役割を果たしている側面もある。50年間は一国二制度を守ると約束したCCPだが、香港の中国化を淡々と進めている。
■ 香港の宗教人口
儒教 59・6%
プロテスタント 7・0%
カトリック 4・5%
イスラム 1・2%
仏教 0・4%
ヒンズー 0・5%