20日の「世界難民の日」を前に、キリスト教国際NGO「ワールド・ビジョン」は17日、新型コロナウイルスのワクチン接種から難民が取り残されているとし、各国政府に対し、ワクチンへの公平なアクセスを優先事項として取り組むよう求めた。ワールド・ビジョンのアンドリュー・モーリー総裁は、「新型コロナウイルスによって最も影響を受けている人々がワクチン接種から最も遠いところに置かれていることに、道義的な憤りを感じる」と述べた。
ワールド・ビジョンが低所得国などにおける新型コロナ関連の状況をまとめた最新の報告書によると、ワクチン接種の優先順位は、感染リスクの高い環境での生活を強いられている難民や国内避難民で最も低い。また、入手可能な全ワクチンの84パーセントが高所得国で接種され、低所得国ではわずか0・1パーセントしか接種が進んでいない。さらに、難民の多くは低所得国に住んでおり、その国で実施されるワクチン接種計画から取り残されているのが現状だという。
モーリー氏は、すでに難民や避難民となっている子どもたちの多くは、ロックダウンによって教育という貴重な機会を逸していると指摘する。「子どもたちは今、虐待する大人と一緒に暮らしているかもしれません。生計手段が絶たれて親や保護者が窮地に陥っているため、子どもたちは強制的に仕事をさせられたり、結婚させられたりもしています」
今月開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、ワクチン10億回相当を途上国などに提供することで合意した。ワールド・ビジョンは、この約束を確実に実現させるよう各国政府に求めるとともに、難民受け入れ国の政府に対しては、法的・書類上の地位にかかわらず、すべての難民・避難民を自国民と同等としてワクチン接種を計画、展開し、社会的保護を確保するよう要請した。
世界保健機構(WHO)などが主導するワクチン配布の国際的な枠組み「COVAX(コバックス)」でも、2021年末までに20億回分のワクチン接種を行うことを約束している。だが、資金不足とスケジュール遅延という両方の問題を抱えており、供給に遅れが出ている。
モーリー氏は、「世界の子どもたちは世界のリーダーたちが行動することを期待しています。私たちの調査は、危機がおよぶ真の範囲を示しています。このパンデミックは、世界の隅々に至るまで解決されない限り、終わることはないのです」と訴えた。