中国当局による厳しい迫害から逃れて約2年。中国の「家の教会」のメンバー約60人は、祖国に戻ることも、難民認定されることもほとんど期待できないまま、韓国南端の島にある小さな借家で暮らしている。
中国南部の都市・深圳(シンセン)にある「深圳改革宗聖道教会」は、「家の教会」と呼ばれる政府非公認の教会で、中国では違法と見なされている。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(英語)によると、同教会のメンバー約60人は2019年秋、韓国の済州(チェジュ)島に逃れ、難民認定手続きの条件を満たそうと懸命に努力しながら生計を立てている。その約半数は子どもたちだ。
ソウルの難民人権センターによると、韓国は昨年、約1万2千件の難民申請を審査したが、承認されたのは0・4パーセントにすぎない。同教会のメンバー約60人も、全員が一度は申請を却下されている。
深圳改革宗聖道教会は12年、元医師の潘永光(パン・ヨングアン)牧師(43)によって設立された。韓国で難民認定される希望が薄いことから、教会のメンバーたちは米国に再定住することを望んでおり、5月には米国の外交官と面会したという。
米国の改革・長老派の牧師らから訓練を受けた潘牧師は、中国当局に拘束され、尋問を受けたこともある。また、中国に帰国したメンバーの中には報復を受け、家宅捜査されたり、行動を制限されたりしている人もいる。
現在も済州島にとどまる約60人のほとんどは、単純労働をして何とか生き延びているような状況だ。帰国を希望する人もいたが、新型コロナウイルス発生後は中国政府が入国を厳しく制限したため、それもかなわない。
中国の迫害状況を監視する在米団体「チャイナエイド」は4月、中国における宗教的迫害が昨年増大し、何千人ものキリスト教徒が教会閉鎖やその他の人権侵害の影響を受けたとする報告書を発表した(関連記事:中国のキリスト教迫害、2020年に増大 米チャイナエイドが報告)。
深圳改革宗聖道教会のメンバーにも、警告するような内容の電話がかかってきたことから、潘牧師らは、中国当局が自分たちの居場所を探ろうとしているのではないかと疑っている。
潘牧師は教会のメンバーに、この苦しみは神の計画の一部であり、「私たちは後戻りできない」と語っている。
チャイナエイドの報告書によると、習近平国家主席の指示の下、宗教に対する厳しい統制を行っている中国当局は、家の教会ばかりでなく、政府公認の教会に対しても、礼拝中の国旗掲揚や愛国歌の歌唱を命じている。
キリスト教迫害監視団体「オープンドアーズ」の「ワールド・ウォッチ・リスト」(英語)によると、中国は世界で17番目にキリスト教徒に対する迫害がひどい国。米国務省は「信教の自由に対する特に深刻な侵害を継続している」として、中国を信教の自由に関して「特に懸念のある国」に指定している。
昨年10月、マイク・ポンペオ国務長官(当時)はクリスチャンポストとのインタビューで、「確かに中国共産党は、目にするすべての場所で信教の自由を根絶する取り組みを行っている」と厳しく非難していた(関連記事:【インタビュー】マイク・ポンペオ氏の信仰の歩み 日曜学校から国務長官まで)。