子どもの権利侵害とされる「児童婚」の件数が、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年3~12月に、一部の地域で前年同期と比べ2倍以上増えたことが、キリスト教国際NGO「ワールド・ビジョン」の調査で明らかになった。ワールド・ビジョンは、コロナ禍により児童婚の件数が過去25年間で最も増加したとし、2023年までにさらに400万人の少女が、未成年のうちに結婚させられる可能性があると警告している。
ワールド・ビジョンはこのほど、支援を行う世界70カ国余りの中でも特に児童婚の問題に取り組んできたアフガニスタンやバングラデシュ、セネガル、ウガンダにおけるデータと研究などをまとめた報告書「Breaking The Chain(鎖を断ち切る)」(英語)を発表した。それによると、コロナ禍の影響により、児童婚をする少女の数は1千万人も増加すると予想されており、2030年までに児童婚をする少女の数は、これまでの予想の1億人から1億1千万人に急増するという。
また、コロナ禍が襲った2020年は、児童婚率が過去25年間で最も大きく上昇し、ワールド・ビジョンが支援を行う多くのコミュニティーで、同年3~12月の児童婚件数が前年同期に比べ2倍以上に増えたという。児童婚急増の背景には、コロナ禍に起因する生計確保手段の喪失や貧困の増加、教育や支援サービスへのアクセス欠如などが考えられている。
ワールド・ビジョンのアドボカシー渉外担当者であるデイナ・ブズセア氏は次のように話す。
「毎年1200万人もの少女たちが18歳の誕生日を迎える前に結婚させられるのは悲痛です。教室の空席、商品として扱われる少女たち、失われる人間的・経済的可能性、そのどれもが悲劇を物語っています。私たちは、家庭の経済的困窮、無理解などが、最も脆弱(ぜいじゃく)な地域で児童婚がなくならない要因の一つと考えています。新型コロナウイルスのパンデミックとロックダウンによって、少女たちは、健やかな子ども時代を生きる権利、そして自分たちの可能性を実現する権利を脅かされています」
児童婚は、18歳未満での結婚、またはそれに相当する状態にあることと定義されている。子どもの成長や発達に悪い影響を与えるとされ、学校を中途退学するリスクも高まり、女子の場合は、妊娠や出産による死亡リスクが高まるほか、暴力、虐待、搾取の被害も受けやすい。婚姻関係を結ぶ男女のいずれかが18歳未満であれば児童婚に該当するが、女子が年上の男性と結婚するケースが圧倒的に多いという。
日本ユニセフ協会によると、世界では約7億5千万人の女性と少女が18歳未満で結婚しており、そのうちの3人に1人以上(約2億5千万人)が15歳未満で結婚している。地域別では南アジアが42パーセントと最も多く、東アジア・太平洋が26パーセント、アフリカが17パーセントとなっている。貧困家庭、また都市部よりも地方で特に多い傾向がある。「持続可能な開発目標」(SDGs)では、ジェンダー平等の実現を目指す5つ目の目標で、具体的な指標として「未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚および女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する」が掲げられている。